セビージャは先月24日、ラ・リーガ第7節のバジャドリー戦での勝利(2-1)後に、2026年6月までだったガルシア・ピミエンタ監督との契約を2027年6月まで1年延長したことを発表した。セビージャの今季6節までの成績は1勝2分け3敗。もしバジャドリー戦に敗れていれば、解任の可能性すらあった中での出来事だった。
セビージャでは、一昨シーズンはジュレン・ロペテギが7節終了後、昨シーズンはホセ・ルイス・メンディリバルが9節終了後と、過去2シーズンはいずれも開幕早々に監督が解任されていた。それだけに、このタイミングでピミエンタ監督が解任されていてもおかしくはなかった。
しかし、クラブから発表された内容は解任ではなく契約更新。たしかにスペインでは、数年前にジローナが2部で低迷する中、クラブが指揮官のミチェルに契約延長のオファーを提示し、この上層部からの信頼を励みにジローナを1部昇格へと導いたのは有名な話だが、今回のセビージャのケースはそうとは受け取られていないようだ。
実際スペイン紙『ムンド・デポルティボ』も、「昇格組のバジャドリーに辛勝した結果が、それまで1勝しかできず、続投を疑問視されていた監督との契約をさらに1年延長することにつながるなど、誰にも理解できない」と、この決断に疑問を呈している。そもそも契約更新の発表の仕方も、バジャドリー戦後にホセ・マリア・デル・ニド・カラスコ会長がドレッシングルームで選手に伝えるところを動画に収め、クラブの公式チャンネルで配信するという奇妙なものだった。その『ムンド・デポルティボ』の記事を書いたフアン・ペレグリン記者は最後に、「フロントのイメージを守ることだけを考えて衝動的に下された決断」と一刀両断している。
セルヒオ・ラモス、マルコス・アクーニャ、ユセフ・エン=ネシリ、ルーカス・オカンポスらが退団したことで、チームのクオリティーの低下が叫ばれ、そうした主力の流出を招く要因ともなった経営不振、さらに現会長と元会長(ホセ・マリア・デル・ニド・ベナベンテ)の権力を巡る親子間の骨肉の争いといった様々な事情が重なって、近年セビージャのフロントは、いつも何かに追われているように決断を下してきた。
今回のピミエンタ監督の契約更新も、その延長線上にあるものとしか見られていない。つい最近もこの10月に退任するゼネラルマネージャーのホセ・マリア・クルスの後任としてバルセロナの元フットボールディレクター、マテウ・アレマニーの招聘を目指していたが、条件面で折り合いがつかず断念したことが報じられたばかりだ。
『ラジオ・マルカ』の人気番組でMCを務めるミゲル・キンターナ氏は、ピミエンタ監督の契約更新についてこう言及している。
「ピミエンタには時間を与えなければならない。(バルセロナ出身で、ポゼッション原理主義者である)彼が最初からセビージャにフィットしないことを分かったうえで連れてきたのなら、その信頼を維持しなければならない。しかし、このタイミングで契約期間を延長する必要はなかった。もちろん、これでクラブに安定がもたらされればいいが、そこから見え隠れするのは上層部の焦燥感だけだ」
今週末には、セビージャ・ダービーが開催される。相手のベティスはマヌエル・ペレグリーニ監督が長期安定政権を築き、かつてお家芸だった迷走癖もすでに過去のものとなっている。過去2シーズンの4試合はいずれも引き分けに終わっているが、はたして今回はどのような結果になるのか。
文●下村正幸
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