マイアミ・ヒートは現地時間9月30日にメディアデーを終え、翌10月1日からバハマでトレーニングキャンプをスタートさせた。
チームは今後、ホームのカセヤ・センターで紅白戦、9日のシャーロット・ホーネッツ戦から計5試合のプレシーズンゲームをこなし、23日にレギュラーシーズン開幕(対オーランド・マジック)を迎える。
ヒートは昨年引退したユドニス・ハズレムに代わり、在籍8年目の最古参バム・アデバヨがキャプテンを務めている。メディアデーで27歳のアデバヨはその役割の難しさを次のように話していた。
「毎年新しい選手が入って、僕らのことやチームがどう動いていくのかを説明しなきゃいけない。僕はキャプテンになることを自分で選んだわけじゃない。UD(ハズレム)にこの役割を押し付けられたようなものなんだ。でも、いざその役割を理解し、困難な立場に身を置くと、もう自分だけの問題ではなくなるんだ」
そんなアデバヨにとって、今夏にアメリカ代表として出場したパリオリンピックは良い刺激になったようだ。レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、ケビン・デュラント(フェニックス・サンズ)といったスーパースターたちとプレーした経験を、地元メディア『Miami Herald』に語っている。
「オリンピックで、僕は歴史的な偉業のひとつをやり遂げたんだ。あのドリームチームと比較されるほどのチームの一員になった。殿堂入り間違いなしの3選手(レブロン、カリー、デュラント)が最後に共演するチームに入ったんだ。これはもう、言葉では言い表せないね」
パリ五輪で全6試合に出場したアデバヨは、平均16.1分コートに立ち、6.0点、3.7リバウンド、1.3アシストをマーク。206cm・116kgのサイズにペリメーターまで守れる守備力を発揮し、大会5連覇に貢献した。
また、大会前に行なわれたセルビア代表との強化試合で3ポイント成功率60.0%(3/5)、予選ラウンドの南スーダン戦でも3本中2本の3ポイントを決めるなどアウトサイドショットでも見せ場を作った。 昨季までのNBAキャリア7シーズンでは、計104本の3ポイントを放って成功23本、成功率22.1%と、アデバヨは決して外角のシュート力を期待されているわけではない。
1試合平均1.0本以上を試投したシーズンは皆無で、最高でも昨季の42本(成功15本)だ。それでも、今季はパリ五輪の実績を踏まえ、1シーズン100本を放つこともエリック・スポールストラHC(ヘッドコーチ)は「信頼してくれている」とアデバヨは言う。
事実、ヒートの守護神は新シーズンに向けてパリ五輪終了後も3ポイントの練習を重ねてきた。だがアデバヨの夏の取り組みはそれだけではない。
「僕は常にすべてのことを向上できるように努力しているんだ。具体的にひとつのことじゃなくね。確かに、みんなが3ポイントについて指摘してくる。でも僕にとってはプレーメークや試合の展開を読む力をつけることが、フロアで(ヘッドコーチに次ぐ)2番目のコーチになるために必要なことなんだ。そうなれたら、(スポールストラHCの)声が届かない時でも試合を通じて自分たちの目的を理解し、(コート上の選手たちだけで)コミュニケーションを取ることができるんだ」
ジミー・バトラーやテリー・ロジアー、タイラー・ヒーロー、ハイメ・ハケスJr.といった個性的な選手が一丸となり、最後まで粘り強く戦うことが信条のヒート。そのなかで、アデバヨはコーチ陣の考えを率先して理解し、チームメイトたちへ落とし込み、コート上の指揮官となって勝利へ導く。その存在が年々大きくなっていることは間違いない。
文●秋山裕之(フリーライター)