特殊な飲水システムを持つ魚類たち
サメは特殊な飲水機構を持つ / Credit:写真AC
しかし、一般的な海水魚や淡水魚のように、単純な浸透圧の仕組みだけで、水分を摂取している魚類ばかりではありません。その特殊な魚類とは、軟骨魚類と、淡水域と海水域を行ったり来たりする魚類です。
まずサメ、ギンザメ、エイなどの軟骨魚類は、あまり水を飲む必要がありません。
それは、軟骨魚類は、体内にアンモニアの塩辛い副産物である「尿素」を高濃度で溜め込むからです。こうすることによって、彼らの体液は海水の同じ濃度になり、浸透圧を調整する必要がないのです。
サメはアンモニア臭いと言われることがありますが、これがその理由です。
また、アユ、サケ、ウナギ、ボラ、スズキ、ミドリフグなど、淡水と海水を行ったり来たりする魚類たちは、周囲の環境の変化に合わせて、浸透圧調節を器用に切り替えることができます。
つまり水中で生活するどの魚類も基本的には喉が乾いて水が必要になりますが、「浸透圧」の仕組みを上手に利用して水分の摂取量を調整しているのです。
しかし、浸透圧の働く「向き」が、淡水と海水では異なっています。周囲の環境に適応できた生物だけが生き残り、進化してきた例の1つと言えるでしょう。
【編集注 2024.01.08 00:30】
誤字を修正しました。
参考文献
Do fish get thirsty?, Kiley Price
https://www.livescience.com/animals/fish/do-fish-get-thirsty
なぜ魚が川や海で生きられるのか?を解く, 宮崎大学 農学部 海洋生物環境学科
https://www.miyazaki-u.ac.jp/agr/books/book-fishery/post-48.html
淡水魚、海水魚の違いとは!どうしてその水じゃないと生きられないのか?浸透圧を解説!, 東京アクアガーデン
https://t-aquagarden.com/column/salinity
サメが「アンモニア臭い」と言われるワケ 尿素を体内にため込むから?, TSURINEWS
https://tsurinews.jp/126247/
サメたちはどのようにして海という環境に適応しているのか
https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/37/sc37-1.pdf
元論文
魚類の浸透圧調節とセシウムの排出, 金子豊二
https://www.jstage.jst.go.jp/article/swsj/69/4/69_238/_pdf/-char/ja
Osmotic stress sensing and signaling in fishes, Diego F. Fiol
https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1742-4658.2007.06099.x
ライター
山﨑 実香: 東京大学 大学院 農学生命科学研究科 修士課程修了後、
大手学習塾の運営する理科実験教室の教室長を勤める。
退任後の現在は
◆小学生向けオンラインスクール / 中学校(出張授業)
での理科実験講師、サイエンスコミュニケーション講師
◆理系情報サイトのサイエンスライター
など、常に複数の教育系、自然科学系の業務に携わる。また
◆学習塾指導者認定(理科)
◆幼児STEAMインストラクター
などの資格を所持し、講師業やライター業に活かしている。
歌うことが好き。
HP https://mikayamazaki.crayonsite.com/
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。