多くのアマチュアは自分自身でゲームの判定を下す「セルフジャッジ」でテニスの試合をしています。「自分で判定するなら簡単」と思うかもしれませんが、それは大間違い。いい加減な判定によってトラブルを起こすことが多々あるからです。
そうしたトラブルなしで試合を楽しむには、とにかくルールに詳しくなることが大切です。そこでテニス四大大会の出場経験を持つ元プロ選手で現在公認審判員も務める岡川恵美子氏にケース別でルールについて解説してもらいました。
今回は「コート外から物を借りる行為」についてです。試合中にアドバイスを受けることは禁止されていますが、ではコートの外にいる仲間からラケットを借りたり、肌寒いからといって上着を借りたりすることは、ルール的に問題ないのでしょうか?
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結論から言えば試合中に外部から物を借りるのは大丈夫です。ロービングアンパイア(セルフジャッジの試合会場を巡回している審判またはレフェリー)がいれば、ロービングを経由して受け渡しを行なうことになります。
とはいえ対戦相手に「なにかやましいことがないのかな」と疑われるかもしれません。例えば渡された上着にアドバイスを記したメモが隠されている、という具合です。公式戦などであれば、前述したようにロービングを経由しての受け渡しになりますが、それはコーチングやドーピングなどを防ぐためでもあります。そうした不正の有無を確認するためにロービングを経由するわけです。
ただロービングがいないローカル大会ではそうはいきません。そんな時は対戦相手に「ストリングが切れたので友人からラケットを借ります」など一言伝えるようにしても良いかと思います。また物の受け渡しは速やかに行なうことです。
「もっとテンションの高いラケットある?」と仲間に探してもらい、その間試合を中断するといったケースはもちろんNGです。
よくあるのは、公式戦などで着用しているシャツのロゴマークが大会規定よりも大きかった場合などです。試合前に審判から「他のシャツは持っていませんか」と尋ねられ、「持っていない」となった時は、「では、誰かからロゴの小さなシャツを借りられませんか」となるケースです。物を借りることはルール違反ではありませんが、試合前にしっかりと準備しておきたいものです。
解説●岡川恵美子
17歳で全日本選手権を制覇して日本初の高校生プロとなる。グランドスラム(四大大会)では、全豪オープン3回戦進出をはじめ、全仏オープンやウインブルドンの本戦に出場。現在はベテラン大会に挑戦しながら、ITF公認審判員、JTA公認審判員も務める。
構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2024年6月号より抜粋・再編集
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