決選投票で高市早苗氏を破り、5度目の挑戦で自民党新総裁に就任した石破茂氏。政界きっての“鉄オタ”として知られ、ネット上では鉄道ファンから歓迎の声があがっている。

 ただし、単に同好の士として応援するわけではなく、《これ以上、ローカル線を廃止させないでほしい》《地方の鉄道を盛り上げて》など、国のトップとして鉄道が抱える問題に取り組んでほしいという期待が大きい。

 例えば、北海道ではJR函館本線の長万部―小樽間が北海道新幹線の札幌延伸に伴い、廃止されることがすでに発表されている。だが、このうち余市―小樽間は1日当たりの利用者数は平均2000人を超えており、近年廃止に至った路線、区間と比べると格段に多い。

 廃止予定区間のちょうど中間には、今や世界的なリゾート地として人気のニセコもある。冬場は外国人の乗客が殺到し、今年1月には途中の余市駅で乗客が乗り切れない事態となっていたことを一部メディアが報じたほどだ。

 さらに9月に16日間、この長万部―小樽間(通称・山線)経由で札幌―函館を運行した「臨時特急ニセコ号」はどれもほぼ満員。また、貨物列車は通常南回りの室蘭本線経由だが、00年の有珠山噴火で71日間運休した際には、山線ルートで運行され代替路線として役割を果たした。

 そんな函館本線・山線だが、そもそもバス転換も暗礁に乗り上げており、バス会社側は深刻な運転手不足を理由に「ノー」を突き付けるという異例の事態となっているのだ。

 一方、島根・広島両県にまたがるJR木次線も今年5月、JR西日本の山陰支社長が備後落合から途中駅の出雲横田の区間について「沿線自治体と公共交通の在り方を協議したい」との意向を示し、廃止が秒読みと報じられている。

 鳥取が地元の石破新首相と同じ山陰地方のローカル線だけに、鉄道ファンから《総理の力でなんとかしてほしい》との切実な声があがる。

「首相が鉄道ファンだから路線廃止をストップできる、というほど単純な問題ではありませんが、石破氏は交通インフラとしての鉄道の役割が大きいことを認めており、鉄道会社が上下分離方式(※列車の運行、施設の保有・管理を別会社が担う)を採用していないために負担増となり、廃止に踏み切ってしまうと問題点を指摘しています」(全国紙記者)

 また、国と佐賀県との対立で工事未着工の西九州新幹線・武雄温泉―新鳥栖間の延伸問題では、石破氏は「直通でフル規格が走ることは重要」と総裁選中に地元紙の取材に答えている。フル規格を敷設するには莫大な建設費用がかかり、その負担が県が反対する理由であるだけに合意を得るのは簡単ではなさそうだ。

 問題山積の鉄道問題にどう取り組むのか、新総理のお手並み拝見だ。

※画像は木次線

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