テニスの日本チャンピオンを決める「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権98th」(10月4日~13日/東京・有明/ハードコート)は第2日を迎え、男女シングルス1回戦などが行なわれた。
この日注目を集めたのは、今大会を最後に現役から退くことを表明している伊藤竜馬だろう。全日本で通算5度の決勝進出を果たし、2度にわたり優勝している元世界60位の36歳は、この日も元チャンピオンらしい底力を発揮。23歳の中山太陽を3-6、7-5、6-3の逆転で下し2回戦へと駒を進めた。
センターコートで1度も練習していなかった伊藤は、想定以上に球足の遅いコートに「アジャストできなかった」こともあり、得意のフォアハンドが度々ラインを割るなどイージーなミスを連発。第4ゲームでサービスをブレークされると、そのリードを縮めることができず第1セットを3-6で失う。
お互いにブレークを繰り返す緊迫の戦いとなった第2セットは4-5となり、山中のサービングフォーザマッチを迎える。この日サービスエースを量産しているだけに、観客の多くは伊藤の敗戦を想像したかもしれない。
だが「(相手は)硬くなっている部分があるので、大事な場面で(それが)出てくるかなと思った」という伊藤は集中力を高めてボールを追った。すると崖っぷちで値千金のブレークに成功。伊藤はこの日初めてコートに響きわたる雄たけびを上げた。
百戦錬磨の元チャンピオンは戦いの潮目を見逃さなかった。「それまでは慎重に行き過ぎた感じもあったので自分自身を盛り上げて、逆に相手を飲み込むように行けた。そのひと踏ん張りが良かった」とは伊藤。5-5から2ゲームを連取して7-5で第2セットを奪うと、第3セットもアクセルを緩めることなく突き進む。そして5-3で迎えた第9ゲーム、最後は伊藤らしいフォアハンドの強打をオープンコートに突き刺して逆転k劇を演じ切った。
試合後に今回の全日本で求めていることを問われた伊藤は「結果というよりもファンの人や家族、スポンサーの人に僕の最後を見て欲しいという気持ちが強く、その中で1日でも長くいれたらという感じです」と語る。伊藤のラストダンスは続く。
試合はコロシアム(センターコート)の5試合の他に、インドアコート3面を利用して13試合を実施。男子は、住澤大輔(9)、市川泰誠(15)らシード勢が、女子は佐藤光(9)、秋田史帆(13)、阿部宏美(14)らのシード勢が勝利している。
大会3日目となる10月6日(日)は、10時から第1試合を迎える。
◆男子シングルス1回戦の結果(10月5日)
○市川泰誠(ノア・インドアステージ)[15] 6-0 6-1 大岐優斗(いちご)[WC]●
〇伊藤竜馬(興洋海運)3-6 7-5 6-3 中山太陽(EMシステムズ)●
〇小林良徳(SYSテニスクラブ)[WC] 3-6 6-2 6-3 田島尚輝(やまやコミュニケーションズ)●
○川橋勇太(Team REC)6-3 6-1 大塚健太郎(伊予銀行)●
〇柴野晃輔(LUCENT ATHLETE WORKS) 7-6(5) 6-3 小倉孝介(One Asia Lawyers Group)●
〇住澤大輔(イカイ)[9] 6-1 6-3 髙悠亜(日本大学)[WC]●
〇中川舜祐(伊予銀行)[11] 7-6(9) 6-2 井戸垣一志(関西大学)[Q]●
〇正林知大(Team REC)[Q] 6-4 6-3 楠原悠介(伊予銀行)●
松田康希(イカイ)[10] ― 羽澤慎治(JCRファーマ)[Q]
※男子の試合結果は順次更新
◆女子シングルス1回戦の結果(10月5日)
〇小堀桃子(橋本総業ホールディングス)[Q] 6-1 7-6(5) 大前綾希子(橋本総業)●
〇松田鈴子(ノア・インドアステージ)6-4 4-6 6-3 小池愛菜(IMG Tokyo)●
〇吉本菜月(筑波大学)[Q] 6-0 6-2 鈴木渚左(明治大学)[Q]●
〇西本聖良(トップラン)[Q] 4-6 7-6(5) 6-1 緒方葉台子(グラスコート佐賀テニスクラブ)[Q] ●
〇佐藤光(アクロステニスアカデミー)[9] 6-4 7-5 川口夏実(Radius7)●
〇秋田史帆(テニスラウンジ)[13] 7-6(4) 7-5 川岸七菜(アカラクリニック)[Q] ●
〇北原結乃(橋本総業ホールディングス)[Q] 6-3 6-3 金子さら紗(早稲田大学)[Q]●
〇松田美咲(エームサービス)[11] 6-4 6-3 板谷里音(リコー)[WC] ●
〇阿部宏美(EMシステムズ)[14] ) 6-2 6-3 松本安莉(島津製作所)[Q]●
※[Q]は予選勝者、[WC]はワイルドカード、名前の後の番号はシード
取材・文●小松崎弘(スマッシュ編集部)
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【画像】2023年の全日本テニス選手権男子シングルス決勝フォトギャラリ―
【画像】2023年の全日本テニス選手権女子シングルス決勝フォトギャラリ―