テニスの日本チャンピオンを決める「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権99th」(10月4日~13日/ハードコート)が東京・有明テニスの森公園で開催されている。第3日を迎えた6日には男子シングルス1回戦と女子シングルス2回戦などを実施。この日は特に若手が元気なプレーを見せた。
男子1回戦で注目されたのは、スペインのナダルアカデミーで腕を磨く18歳の本田尚也だ。今年のウインブルドンジュニアでベスト4に入ったホープがワイルドカードで全日本に初出場。予選勝ち上がりの末岡大和と対戦した。
「コロシアムだったので最初は本当に緊張して、思うようなプレーができなかった」と言う本田は、動きが硬く、ミスも続いて、末岡のパワーに圧倒される。第1セットを3-6で落とし、第2セットも2-5のピンチ。
しかし「2セット目の途中からできるだけコートに入れようと粘り強くプレーすることで、ゲームが取れてきた」と踏みとどまる。ここから5ゲーム連取で第2セットを奪取。
第3セットでは大気の片りんを存分に見せつけた。低弾道のバックハンドを測ったようにコーナーに打ち込み、エースを量産。相手に振られても俊敏なフットワークで追いつき、カウンターで切り返す。
「3セット目は気持ちが落ち着き、慣れてきて、少しずつ攻めに転じることができた」と本田。2-2から4ゲーム連取で試合を締めた。
年明けにはプロ登録する予定だという本田。この秋はデビスカップ日本代表に帯同し「錦織選手や西岡選手のプレーや練習、オフコートでの過ごし方とか、自分も今後プロになった時のために色々学ぶことが多かった」と、貴重な時間を過ごした。そこで得たものは全てこれからの糧となっていくだろう。まずは今回の全日本で大暴れし、プロ転向に弾みをつけてほしい。
女子2回戦では、筑波大学3年生の吉本菜月と亜細亜大学を卒業してプロ1年目の山崎郁美のカードがコロシアムの第1試合に組まれた。2023年と22年のインカレ女王対決は、吉本が冷静なプレーで山崎を押し切った。
2人は昨年の関東大学リーグで対戦しており、吉本が勝利している。「相手はうまいし、色々やってくるとわかっていたので、準備はできていた」と言う吉本。早いテンポの強打やスピンのムーンボール、バックのスライスなど、多彩なボールを混ぜて揺さぶってくる山崎に対し、吉本は「打てるところは打って、耐えるところは耐えた」とバランスの取れたテニスを展開。
もともと吉本はニュートラルなボールでも球威があり、無理に打たなくてもラリーを作れる。「打っちゃう場面もあったが、同じミスは2度しないようにした」と語る通り、安定感を保ちながら要所で強打を決め、6-3、6-3で快勝した。
吉本は今季、右ヒジの故障で試合を離れ、6月にボルトを入れる手術をしたばかり。8月末に大学の試合で9カ月ぶりに復帰し、これが2大会目だ。「ヒジはまだリハビリ中で、痛みは残っている」と言うが、「試合を積むごとに試合勘が戻ってきて楽しいし、テニスができるうれしさがある」と語る。その新鮮な気持ちが、彼女のプレーを後押ししている。次戦は第1シードの齋藤咲良が相手だが、「色々挑んで収穫できたらいい」と臆せずぶつかる構えだ。
◆男子シングルス1回戦の結果(10月6日) ※随時更新
○宮本大勢(MAT GROUP)[Q] 6-4 6-2 大和田秀俊(リコー)[Q]●
○松岡隼(B6TC)[16] 6-2 3-6 6-3 林航平(慶應義塾大学)[Q]●
○丹下颯希(日本大学)[Q] 7-6(5) 6-3 西脇一樹(Team REC)[12]●
○望月勇希(エキスパートパワーシズオカ )[13] 6-2 6-2 上杉海斗(江崎グリコ)●
○武藤守生(高牟礼テニスチーム)[WC]4-6 6-4 6-3 片山楓(マサスポーツシステム)[Q]●
○田中佑(筑波大学)[Q] 4-1 ret. 河内一真(橋本総業ホールディングス)●
○渡邉聖太(橋本総業ホールディングス) 6-4 7-6(4) 菊池玄吾(エキスパートパワーシ○ズオカ)[WC]●
○本田尚也(サトウGTC)[WC] 3-6 7-5 6-2 末岡大和(エキスパートパワーシズオカ)[Q]●
○田沼諒太(ONE DROP) 6-4 3-6 6-4 小泉煕毅(日本大学)[Q]●
○松村亮太朗(村田精工)[Q] 2-6 6-2 6-4 高畑里玖(伊予銀行)●
◆女子シングルス2回戦の結果(10月6日)
○吉本菜月(筑波大学)[Q] 6-3 6-3 山崎郁美(島津製作所)[16]
○佐藤光(アクロステニスアカデミー)[9] 6-4 6-1 小関みちか(橋本総業ホールディングス)
○山口芽生(フリー)[7] 7-5 6-7(7) 6-3 北原結乃(橋本総業ホールディングス)[Q]●
○松田美咲(エームサービス)[11] 6-1 6-1 山口花音(関西大学)[WC]●
○西村佳世(安藤証券) 2-6 6-3 6-3 荒川晴菜 (SBCメディカルグループ) ●
※[Q]は予選勝者、[WC]はワイルドカード、名前の後の番号はシード
取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)
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