大腸菌O157には「酒で消毒」は通用しない

とはいえ、酸とエタノールの混合液でも、大腸菌O157を死滅させることは難しいようです。

松岡教授らの実験では、酸とエタノールの混合液が,大腸菌O157に対して効果的でないことが判明しました(画像参照)。

大腸菌O157のような特定の微生物は、細胞内に入った水素イオンを効果的に排除するメカニズムが備わっているため、わずかな殺菌効果しか得られないのだそうです。

このほかにも、酸に耐性をもつ細菌は、赤ワインをもってしても対抗できない可能性があります。


大腸菌O157に対しては、殺菌効果はあまりないことが確認された。 / Matsuoka, T., et al. (2023)

この研究は、食事中のお酒が単なる楽しみではなく、健康に寄与する可能性があることを示唆しています。

ワインのような酸性度の高いアルコール飲料は、胃内の微生物に対する防御機能を強化する可能性があります。

しかしながら、これはあくまで科学的な発見であって、過度の飲酒は健康に害を及ぼすことには注意が必要です。

「酒飲んで消毒」を飲む言い訳にするのも、たまになら良いでしょう。ですが、飲み過ぎは細菌だけでなく、あなた自身を滅ぼす可能性があることを忘れてはなりません。

飲む量は「ほどほど」に。休肝日を設けることも忘れずに。

参考文献

酒で胃を殺菌!? – 【論文紹介サイト】論文ナビ
https://rnavi.org/108324/

元論文

A gastric acid condition enhances the microbial killing effect of ethanol – Microbiology Research International – Net Journals
https://www.netjournals.org/z_MRI_21_016.html

ライター

鶴屋蛙芽: (つるやかめ)大学院では組織行動論を専攻しました。心理学、動物、脳科学、そして生活に関することを科学的に解き明かしていく学問に、広く興味を持っています。情報を楽しく、わかりやすく、正確に伝えます。趣味は外国語学習、編み物、ヨガ、お散歩。犬が好き。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。