ジッダで過去3回、サウジアラビアに挑み、全敗している日本代表。まさに“鬼門”と言うべき地で、彼らは現地10月10日、2026年北中米ワールドカップ・アジア最終予選の大一番に挑むことになる。
森保一監督は「完全アウェーとなる戦いを覚悟して最善の準備をしたい」と前日会見で語っていたが、今回の会場となるキング・アブドゥラー・スポーツシティ・スタジアムで行なわれた2017・21年のゲームで後半に失速した教訓を活かすことが肝要だ。やはり前半の早い段階でゴールを奪って、相手にプレッシャーをかけたい。
そこで気になるのは、攻撃陣の陣容。9月の2連戦を振り返ると、1トップの上田綺世(フェイエノールト)、三笘薫(ブライトン)と堂安律(フライブルク)の左右のウイングバックは2戦続けて先発。2シャドーも南野拓実(モナコ)だけは連続スタメンで、久保建英(レアル・ソシエダ)が中国戦、鎌田大地(クリスタル・パレス)がバーレーン戦でそれぞれパートナー役を担った。バーレーン戦の終盤には浅野拓磨(マジョルカ)も出てきて、久保とコンビを組んだ。
ご存じの通り、今回は浅野が不在。代わって9月シリーズでベンチ外になった旗手怜央(セルティック)が第4候補に浮上してきそうだ。ただ、サウジというグループ最強の敵を視野に入れた時、森保監督は南野・久保か、南野・鎌田のいずれかをスタメンで送り出すはず。そのどちらになるかが非常に興味深いところだ。
「たとえば、タケと大地だったら、よりシャドーのポジションでゲームメイクの役割を担って、俺は動き回ってかき回したり、空いたスペースに飛び込んでいく。シンプルにはたいてもう1回出ていくとか、薫のスペースを空けたりとか。そういう役割は前回最終予選の時よりもスッキリしています」と南野は9月シリーズの時に語っていたが、どっちと組んでも自分はセカンドトップ的にゴール前に厚みをもたらしていく構え。
実際、モナコでも似たような役割を担っていて、本人もやりやすい。最前線の上田との連係も取りやすいだろう。
その前提で、ボール支配にこだわるサウジという相手を考えた時、前線からハードワークしてボールを追ってくれるタイプの方が、早い時間帯の得点を狙いやすい。アグレッシブさという意味では、鎌田より久保の方にやや分がある。
しかも久保は、中盤の組み立てに関与しつつ、右サイドに流れたり、幅広いエリアを動き回りながら、決定機を演出できる。そういう意味で、指揮官は今回、久保をチョイスするのではないか。
「サウジの大型補強の影響もあって、リーグに出られていない選手がほとんどだと思いますけど、その分、まとまったストレスみたいなものを代表戦でぶつけようと思ってる選手はいるでしょうし、そういったところは警戒するべきかなと思います」と、久保は相手の激しさやタフさを気にしている様子。
そんな相手をうまくいなしつつ、両ウイングバックと絡みながら、南野や上田に決定機をお膳立てできれは理想的。逆に相手を苛立たせるような駆け引き上手な一面を完全アウェーの一戦で見せてほしい。
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最近のクリスタル・パレスではやや出番が減っている鎌田も、代表では良い味を出せる人材だ。実際、バーレーン戦でもリンクマン的なプレーを披露。三笘との連係からポケットを取る動きを見せたり、守田英正(スポルティング)とポジションを入れ替えながら円滑な流れを作り、全5点中4点に関与するというインパクトを残している。
仮に今回も0-0で試合を折り返し、後半勝負になった時は、久保と鎌田を入れ替えて、独特のリズムをチームに持ち込むのも一案。鎌田自身は「アシストの前のパスが多くて、目に見えない結果がなかなか残せていない」という悩みがある分、よりゴールへの意欲を強く押し出していくべきだ。
3年前のサウジ戦ではそういった効果的な仕事があまりできなかった。手痛い敗戦とともに鎌田は代表から遠ざかり、2022年カタールW杯出場が決まるまで選外が続いた。サウジという相手は彼にとって因縁のある宿敵なのである。
本人は2026年W杯に出ることを最大目標と位置づけているが、3年前の失敗がある分、今回は最終予選を通してチームのために働きたいという思いは強いはず。
だからこそ、前半戦最大の山場と位置付けられるサウジ・オーストラリアとの2連戦では、明確な結果を残してほしいところだ。
いずれにしても、南野を軸に久保、鎌田らが連動し、攻撃の起爆剤になってくれれば、今回はそこまで苦しまずに鬼門突破を果たせるのではないか。日本の勝敗は2シャドーの出来にかかっていると言っても過言ではないだけに、その一挙手一投足が問われる。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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