現在開催中の女子テニスツアー大会「武漢オープン」(10月7日~13日/中国・武漢/ハードコート/WTA1000)は現地9日にシングルス2回戦が行なわれ、エリカ・アンドレーワ(ロシア/世界ランク70位/20歳)とミラ・アンドレーワ(ロシア/同19位/17歳)による注目の姉妹対決が実現。姉のエリカが6-3、6-1で快勝し、ベスト16入りを決めた。
試合前のフォトセッションでは満面の笑みを浮かべていた2人。しかし戦いを終えるとエリカとミラはネット際で言葉を交わさないまま抱き合って慰め合い、それぞれのベンチに戻っていった。
「私も妹も心情的にタフだったはず。初めての経験で、大きな大会で対決が実現したことは私たちにとってうれしいことだったけど、楽しかったかどうかと言われたらわからないわ」
勝利後のオンコートインタビューでそう語った姉のエリカ。だが複雑な思いを抱えていたのは妹のミラも同じだった。WTA(女子テニス協会)公式サイトによると、ミラは試合前のメディア対応で今回の姉妹対決について「悪夢のよう」とコメントしていた。
ミラは今年6月の全仏オープンで初の四大大会4強入りを果たすと、7月の「ユニクレジット・ヤシ・オープン」(ルーマニア・ヤシ/クレー/WTA250)では17歳90日でツアー初優勝。先週更新された世界ランキングではキャリアハイの19位をマークした。一方のエリカはまだツアータイトルがなく、四大大会では2回戦進出が最高成績。自己最高位も先月記録した67位である。すなわち実績では妹が姉を大きく上回っているのだ。
「子どもの頃から一緒にプレーしてきた」(エリカ)という両者だが、ここ5年以上は練習試合ですら対戦がなかったとのこと。そんな中でミラが不安を抱えていたのは、実力的に勝たなければならないというプレッシャーだけではなく、姉妹であるがゆえにエリカが自分の手の内を熟知しているからだ。今回の対決ではそれが如実に表れた形となった。
試合は「妹がどこに打つ可能性が高いかを知っている」エリカが主導権を掌握。「同じく私がどこに打つかを知っている」ミラに先にブレークを許したものの、第5ゲームから一気に5ゲームを連取して逆転に成功し、第1セットを6-3で先取した。
「『普通ならあそこに打つけど、彼女はそれをわかっているはず』と思って、ショットの選択を変えたりした」と語るエリカに対し、ミラはリズムに乗れないままアンフォーストエラーを連発。「それが常に最良の選択だったかはわからない」という迷いもありながらも終始冷静にプレーしたエリカが第2セットも6-1で奪い、1時間30分で初めての姉妹対決を制した。
3回戦では今年だけで2度の四大大会決勝進出(全仏・ウインブルドン)を果たした第3シードのジャスミン・パオリーニ(イタリア/6位)と対戦するエリカ。妹の思いも背負いながら、次戦も果敢なプレーを見せてくれるだろう。
文●中村光佑
【動画】アンドレーワ姉妹が対決!「武漢オープン」2回戦ハイライト
【分解写真】ミラ・アンドレーワが得意とするバックハンドのカウンター「30コマの超連続写真」
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