「早い人なら30歳でもお払い箱」。世間では人手不足、賃金上昇などと言われているが、それとは裏腹に企業の人員整理も活発なようだ。
10月7日に東京商工リサーチが公表した調査結果では、今年1~9月に早期・希望退職を募集した上場企業は46社で、昨年同期の1.5倍、人数では約4倍にも及ぶという。中には30歳からの募集もあり、「低年齢化も進んでいる」というから、何とも薄ら寒い話だ。
「同じく東京商工リサーチが8日に発表した今年4月~9月の企業倒産件数は前年比17.8%増の5095件(負債額1000万円以上)で、10年ぶりの5000件超え。主な理由は人手不足とされています。一方で大企業では40~50代の中高年の人材がダブついていて不要。それが30歳以上にまで及びつつあるというのですから、人材のミスマッチぶりばかりが目立つ話です」(経済ジャーナリスト)
そんな中、小泉進次郎氏が自民党総裁選立候補にあたって解雇規制の見直しに言及。それはそれで異論含みなものだったが、かと思えば、その総裁選を制した石破政権で財務大臣になった加藤勝信氏は7日、高齢者向けITサービス企業のイベントに登壇し、7月に上場した「タイミー」のような、いわゆる“スキマバイト”が雇用のミスマッチ解消の大きな方策の1つとしてサービスの有効性を称揚していた。
「タイミーの上場に当たって公開された情報によれば、利用者の42%が40~50歳台で、早期・希望退職の対象者でかつ、いわゆる就職氷河期の世代であるという現実が分かりました。就職氷河期世代では、小泉政権の規制緩和で非正規労働者が大量発生し、それが日本の中間層を破壊した元凶とされています。そういった層が、スキマバイトで生計を支えている現実があって、さらにこの層は、上場企業に就職できたはいいものの、早期・希望退職で不要な人材と化しているというわけです」(同)
人手不足は今後の少子高齢化もあって大きな政治的課題となり、外国人労働者のさらなる受け入れが議論となっている。一方で日本人自体は雇用のミスマッチで、ともすれば今後、路頭に迷う人が大量に発生するかもしれない現実が迫っている。何とかならないものか。
(猫間滋)