1つの時代が終わりを告げる。
男子テニス元世界ランク1位のラファエル・ナダル(スペイン/現158位)が10月10日に自身の公式SNSを更新。11月19日に母国で開かれる男子国別対抗戦「デビスカップ・ファイナルズ・ノックアウトステージ」(スペイン・マラガ/ハードコート)を最後に現役から引退すると正式に発表した。
左利きで現在38歳のナダルは2001年にプロに転向。タイトル獲得数92、世界1位在位は歴代6位の209週を数えるなど幾多の輝かしい功績を手中に収めてきたが、彼のキャリアを語る上で欠かせないのが、やはり「全仏オープン」(フランス・パリ/クレーコート/四大大会)での驚異的な強さだろう。
強力なトップスピンの利いたフォアハンドを武器にとりわけクレーコートで力を発揮したナダルが全仏で頂点に立った回数はなんと14度。また同大会では通算116試合を戦ったが、うち敗れたのはわずか4度だけだった。そうした記録こそ、ナダルが“赤土の王者”と呼ばれる所以だ。
その他、四大大会では全豪オープン2勝、ウインブルドン2勝、全米オープン4勝を挙げており、08年の北京五輪ではシングルスで金メダルを獲得。さらには10年の全米を制して史上7人目の“生涯グランドスラム”(キャリアで全ての四大大会を制すこと)を成し遂げ、同時に“生涯ゴールデンスラム”(四大大会と五輪制覇)の偉業も達成した。
だが晩年はケガとの闘いの連続だった。05年ごろから抱えてきた左足の慢性疾患をはじめ度重なる故障に悩まされ、昨季は1月の全豪で2回戦敗退を喫して以降ツアーでは1度もプレーできず。また今季も約1年ぶりの復帰戦となった年明けの「ブリスベン国際」の準々決勝で左足上部を痛め、約3カ月にわたり戦線を離脱。4月中旬の「バルセロナ・オープン」で復帰するも本来の強さは戻らず。5月の全仏では自身初となる初戦敗退を喫した。
また全仏と同じローランギャロスで開かれた今夏のパリ五輪では、長年共に男子ツアーを牽引してきた宿命のライバル、ノバク・ジョコビッチ(セルビア/現4位)に完敗。同郷の後輩カルロス・アルカラス(現2位/21歳)と組んだ男子ダブルスではベスト8に進んだものの準々決勝で敗れた。なお五輪を最後にナダルは現在まで大会に出場していない。
そしてとうとう38歳のレジェンドが下した“しかるべき”決断――このほどナダルはSNSでメッセージ動画を添え、スペイン語で次のように引退の旨を報告した。
「皆さん、こんにちは。プロテニスから引退することをお伝えするために、私は今ここにいます。特にここ2年は困難な年だったのは事実です。(フィジカル面で)制限なくプレーすることはできなかったように思います。これは本当に難しい選択で、決断を下すまでには時間がかかりましたが、人生には全てにおいて始まりと終わりがあり、長く続いたキャリアに終止符を打つのに適切な時期だと思っています。それでも私のキャリアは想像していたよりもはるかに成功しました」
続けてキャリア最後の大会となるデビスカップに向け、「母国を代表してプレーできることにとても興奮しています。プロ選手として最初に得た大きな喜びの一つがデビスカップ出場だったので、これで一周できると思います」とコメント。最後には自身の家族を含め、これまで支えてくれた人々への感謝の言葉をこう口にした。
「これまで経験できた全てのことに対して、私はとてもとても幸せに感じています。家に帰って、息子が毎日どのように成長しているかを見ることは、私がプレーを続けるための必要なエネルギー源となっていました」
「最後に、ファンの皆さんが私に感じさせてくれたことに対して、いくら感謝してもしきれません。皆さんは私がどんな瞬間にも必要としていたエネルギーを私に与えてくれました。本当に、私が経験した全てのことにおいて夢を実現させることができました。最善を尽くし、あらゆる面で努力できたという絶対的な安心感を持って選手生活を終えられそうです。皆さんには千の感謝を申し上げることしかできません。またお会いしましょう」
“ラストダンス”となるデビスカップでは、世界中のファンが複雑な気持ちを抱えながらナダルのプレーを見守ることになるだろう。ぜひともかけがえのないチームメイトとともに勝利で最後の花道を飾ってほしい。
文●中村光佑
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