化粧品業界を代表する花王株式会社と株式会社コーセーが協力して推進するサステナビリティの取り組みは、新たなステージに進んでいます。2021年から化粧品事業における持続可能な開発を目的に連携を強化してきた両社は、2024年6月から新たな試みとして、多摩美術大学の学生を対象にデザインコンテスト「Makeup Art Pen Award 2024」を開催しました。このコンテストは、最終的に商品化されなかったメイクアップ化粧品をアップサイクルし、株式会社モーンガータが製作した水性ボールペン「SminkArtペン(スミンクアートペン)」を使用して、学生たちが新たなアートを創り出すことに挑戦するものです。持続可能な社会の実現を目指し、化粧品の廃棄物をアートに変えるこのユニークな取り組みは、参加者にとっても観る者にとっても未来への希望を感じさせます。

「SminkArtペン」で生み出される未来のアート

「Makeup Art Pen Award 2024」は、「彩りがひらく、未来」をテーマに、多摩美術大学の学生たちが「SminkArtペン」3色のみで制作した作品を募集しました。短期間での制作にもかかわらず、学生たちはペンの持つラメやパールといった化粧品ならではの質感を最大限に活かし、独創的なアート作品を仕上げました。審査では、作品の技術的な側面だけでなく、学生たちの創造力や表現力が評価され、最終審査に進んだ10名は、自分の作品に込めた思いをプレゼンテーション形式で発表しました。
最終審査の結果、見事グランプリを受賞したのは、多摩美術大学の関原優奈さんによる作品「バタフライエフェクト」です。この作品は、蝶の羽が持つ繊細な模様をヒントに、多様性と個性が集まる現代社会の美しさを表現したものです。関原さんは「SminkArtペン」の色やラメが重なることで、蝶の羽のように輝く効果を生かしながら、個々の個性が集まり新たな美しさを生むというメッセージを込めました。

受賞作品紹介

グランプリ

作品名:「バタフライエフェクト」/作者:関原 優奈(せきはら ゆうな)

<作品について>
蝶々の羽の鱗粉は肉眼では粉のように見えますが、拡大すると小さな鱗が集まって美しい模様をつくっています。この様子は現代の多様性の重視と似ており、個々の個性が集まって美しさを生み出しています。「SminkArtペン」は色やラメが重なってもくすまず、蝶の羽のように美しく表現できました。

<受賞者コメント>
このたびは、素晴らしい賞をいただきありがとうございます。正直、自分がグランプリを取ると思っておらず、本当に純粋に嬉しいなという気持ちでいっぱいです。普段から手を使って絵を描くことが好きで、今回の「彩りがひらく、未来」というテーマも、新しい絵の具を買った時のようなワクワク感で描き切ることができました。本当に貴重な経験をさせていただいたなと思っております。ありがとうございました。

 花王賞

作品名:「beautiful」/作者:宇佐美 流華(うさみ るか)

<作品について>
メイクアップされた美しい女性と海や森に住む動物たちを描いています。アップサイクルによってつくられた「SminkArtペン」は、持続可能な社会を目指す製品です。研究過程で捨てられるはずだったアイシャドウをペンにすることで、化粧品が人を美しく彩るだけでなく、環境も守り続けることができます。このコンセプトを表現するために、人の顔をメインに描き、そこから自然や動物へと繋がるデザインにしました。

<受賞者コメント>
私は、もともと自分自身にコンプレックスがあったのですが、化粧品と出会ったことで、自分らしく、そして強くいることができました。私は描くことが大好きですし、大好きな化粧品をアップサイクルした「SminkArtペン」で描くということで、このデザインコンテストに参加させていただきました。今回、そのようなとても強い思いがあったので、素晴らしい賞をいただけて本当に嬉しいです。これからも、環境や私の思い描く美しい未来になればなと思います。

コーセー賞

作品名:「おえかき、おしゃれ、それから、それから、」/作者:吉澤 舞(よしざわ まい)       

<作品について>
私にとっての「彩りがひらく、未来」とは、子供の頃に思い描いていたワクワクするような未来です。それを表現するために、「忘れてしまっていた純粋な気持ちを思い出しながら、過去の私と未来の続きを描く情景」を創作しました。胸の奥にしまっている大切な未来を取り出して、大切に磨き上げて、もう一度まっすぐ見つめると、昔と変わらない輝きがそこにあるはずです。

<受賞者コメント>
このたびは、このような輝かしい賞を受賞することができて、本当に光栄に思っております。子どもの頃、「SminkArtペン」のようなキラキラしたペンを買ってもらい、お絵かきしていたことを思い出したことが、この作品をつくろうと思ったきっかけです。そのため、今回のデザインコンテストは、とても楽しく参加させていただきました。廃棄になるはずだったメイクアップ化粧品をアップサイクルした「SminkArtペン*1」は、これからもより多くの人の楽しさや希望を照らし続けるような素晴らしい商品だと思っております。

多摩美大賞

作品名:「私たちの未来」/作者:川村 汐音(かわむら しおね)

<作品について>
人種、性別関係なく、私たちの瞳に映る未来が彩りで溢れますようにと願いを込めて、点描で眼を描きました。また、印刷表現である「網点」は、色の重なり合いによってさまざまな色になることができます。本来規則正しいものである網点を手作業で描くことで、従来の考え方を壊したいという意味を込めました。1つ1つの点が人間だとしたら、多様性を尊重し、調和された社会はとても美しい未来をひらいてくれると信じています。

<受賞者コメント>
このような賞をいただけるとは思ってもいませんでしたので、とても嬉しいです。最近はデジタルで表現することばかりで、アナログで絵を描くことが少なくなっていましたが、今回点描画を描く中で点を打つ1点1点に向き合うことで、何だか初心に帰ったような気持ちになりました。純粋に楽しく制作していることを思い出すなど、すごく貴重な経験になったと思います。

SminkArt賞

作品名:「繋げる、繋がる」/作者:増村 朋美(ますむら ともみ)

<作品について>
「SminkArtペン」は持続可能な社会への次世代への贈り物と考え、支持体には牛乳パックをリサイクルして自作の紙を使用しました。アイカラーが自然由来であることから、「希望」「発展」「成長」を象徴するユッカ、サザンカ、ガーベラ、グリーンネックレスなどの植物で、未来の象徴として子供の横顔を描きました。また、未来が次世代を超えて続くことを表現するために、植物の中に小さな子供のシルエットをいくつか描き込みました。

<受賞者コメント>
私はこの作品をつくる際に、自分の経験と関連づけるよりも、「SminkArtペン」が生まれた理由や、ペンそのものについて考えることに一番重きを置いていたので、こちらのSminkArt賞をいただけて大変嬉しく思います。環境問題は、自分が普段生活している中では、途方もない大きな問題のように感じてしまうけれど、やはり誰かが始めないと解決にはつながらないと思います。どんなに小さなところからでも、今回いただいた賞のように、問題解決につながっていくきっかけになればいいなと思いました。

持続可能な未来への取り組みと次世代育成

今回のコンテストで受賞した作品は、10月12日から10月31日にかけて東京・渋谷の「Maison KOSÉハラカド」や銀座の「Maison KOSÉ銀座」、さらに11月4日からは花王株式会社本社で展示される予定です。展示ではグランプリ作品をはじめとする優れた作品が紹介され、一般の方々も作品に触れる機会が提供されます。さらに、表彰式後には、受賞者や入賞者が花王やコーセーのオフィスを訪問し、実際に働く社員たちと交流する機会が設けられました。若いクリエイターたちが、サステナビリティを意識した化粧品業界の未来に触れ、新たな視点を得たことは、彼らの今後のキャリアにおいて大きな財産となるでしょう。

【受賞作品の展示場所・時期について】
場所:Maison KOSÉハラカド(東京都渋谷区神宮前6丁目31-21 東急プラザ 原宿「ハラカド」 地下1階)
日時:10月12日(土)~10月31日(木)
掲出場所:グランプリ、花王賞、コーセー賞、多摩美大賞、SminkArt賞
場所:Maison KOSÉ銀座 (東京都中央区銀座7丁目10-1)
日時:10月12日(土)~10月31日(木)
掲出場所:優秀賞
場所:花王株式会社 本社(東京都中央区日本橋茅場町 1-14-10)
日時:11月4日(月)~11月15日(金) 掲出作品:グランプリ、花王賞、コーセー賞、多摩美大賞、SminkArt賞、優秀賞

次世代クリエイターが拓く持続可能な美の世界

このデザインコンテストを通じて感じたことは、化粧品という一見消費されるだけのアイテムが、アートやサステナビリティという視点から再定義される可能性を持っているということです。花王とコーセーは、廃棄物をアートに変えるという斬新なアプローチで、業界に新たな風を吹き込んでいます。特に、「SminkArtペン」を使った作品は、化粧品が持つ美しさと機能性を存分に活かしており、見ているだけで未来への可能性を感じさせました。今後もこうした取り組みが広がり、より多くの若い世代がサステナビリティを意識した創造的なプロジェクトに関わることを期待しています。化粧品業界が持続可能な未来を目指しながら、アートやクリエイティブの分野とも共鳴していく姿勢は、まさにこれからの時代に必要な変革の一端を担っていると感じました。