【全日本テニス】石井さやかが齋藤咲良との10代対決を制して女王に!「素直にうれしいし自信も付いた」<SMASH>

 テニスの日本チャンピオンを決める「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権99th」(10月4日~13日/東京・有明/ハードコート)は11日、女子シングルス決勝などが行なわれた。第1シードの齋藤咲良と第3シードの石井さやかが対戦し、石井が6-2、3-6、6-4のフルセットで勝利、初の全日本女王の座に就いた。

 18歳の齋藤と19歳の石井という注目のカード。全日本の女子決勝を10代同士が争うのは、1983年の雉子牟田明子対岡本久美子以来41年ぶりのことだ。齋藤と石井は共に早くから世界を視野に捉え、海外遠征や留学で力を付けてきた選手だ。

 齋藤は11歳で富士薬品の支援プログラムメンバーに選ばれ、数多くの海外遠征を経験。世界ジュニアランク2位まで駆け上がり、今年5月にプロ転向した。石井は16歳の時からアメリカのIMGアカデミーに拠点を置き、2022年にはBJK杯日本代表にも選ばれ、昨年プロ転向。現在、一般の世界ランクで齋藤は165位、石井は268位と、日本女子の次代を担う存在として台頭してきている。

 全日本決勝の舞台に立つのは2人とも初めて。2人が織り成すラリーは、今大会の他の試合、他の選手とは異質のレベルだった。
  第1セット、まず桁違いの破壊力で観客を沸かせたのは石井だ。全てのボールを分厚い当たりで叩きつける石井のストロークは、コーナーに入れば文句なしでエースとなり、センター付近であってもその球威で齋藤のラケットを弾く。それでいてミスはほとんどなく、石井自身「最初はすごいいい出だしだった」という出来で、わずか42分で第1セットを先取。第2セットも先にブレークし、このまま駆け抜けるかと思われた。

 しかし、石井いわく「(自分の)足が動いていなかったり、咲良ちゃんがギアを上げてきた」ことで、そこから流れが変わる。齋藤が石井の強打にアジャストし、早いタイミグで跳ね返すようになると、1-2から初めてのブレークバックに成功。「徐々に流れが来たと思った。でもポイントを取りたいと思うとプレーが弱気になるので、今できることをやろうと目の前の1ポイントに集中した」と齋藤は言う。

 その言葉通り、齋藤は引かずに前に入って打ち合い、石井の強打をカウンターで逆襲したり、自分からダウンザラインに叩いてエースを奪ったりと、積極的なテニスを展開する。逆に石井はリズムを崩してミスを多発。齋藤がさらに1つブレークして6-3で第2セットを奪い返した。
  第3セットも齋藤がペースを持続して4-2とリード。ここで今度は石井が「1ポイントに集中」して息を吹き返す。過去に何度も対戦してきた2人は勝負どころを理解し、思考も似ているのだろう。石井は自分のサービスで15-40のピンチを「思い切って強気で行こう、1ポイントずつやろう」と気持ちを切り替え、意地のキープを果たす。

 そこからはまた第1セットの石井が戻ってきた。強打の精度が再び上がり、齋藤にプレッシャーをかけてブレークバック。最後まで迷いなく打ち切った石井は、怒涛の4ゲーム連取で6-4とし、2時間38分の激戦にケリをつけた。

 初の全日本タイトルを「色んなトップの選手がここを通り道にしてきた。自分もそこで優勝できて素直にうれしいし、また自信も付いた」と喜んだ石井。とりわけ齋藤と戦えたことは「こんな大きな大会で決勝をできたのは光栄で、同世代としてうれしい」と喜んだ。

 また齋藤も「(準々決勝、準決勝と)負けてもおかしくない状況から勝ち上がったのは成長できたと思うので、出場して良かった」と、この全日本で収穫を手にした。

 2人の決勝は、ボールの質やスピード、攻撃の速さ、切り返しの鋭さなど、どれを取っても世界と見劣りしないレベルだった。日本女子の次世代に、こんな楽しみな若手が控えている…それを知ることができたのは、今大会の最大の意義だろう。
 ◆女子シングルス決勝の結果(10月11日)
○石井さやか(ユニバレオ)[3] 6-2 3-6 6-4 齋藤咲良(富士薬品)[1] ●

◆女子ダブルス決勝の結果(10月11日)
○林恵里奈/森崎可南子(セーレン/橋本総業HD)5-7 6-2 [10-8] 今村咲/阿部宏美(EMシステムズ)[2] ●

◆男子シングルス準々決勝の結果(10月11日)
○田口涼太郎(Team REC)[5] 6-4 7-5 白石光(SBCメディカルグループ)[1]●
○今村昌倫(JCRファーマ)[4] 6-2 6-2 熊坂拓哉(イカイ)[6] ●
○磯村志(やすいそ庭球部)[3] 4-6 6-4 6-4 片山翔(伊予銀行)[8]●
○伊藤竜馬(興洋海運)6-4 6-3 松田龍樹(ノア・インドアステージ)[2] 

◆男子ダブルス準決勝の結果(10月11日)
○柚木武/渡邉聖太(イカイ/橋本総業HD)[1] 6-3 3-6 [10-8] 今村昌倫/市川泰誠(JCRファーマ/ノアIS)[3] ●
○上杉海斗/野口政勝(江崎グリコ/ONE DROP)7-6(4) 7-6(4) 中川舜祐/楠原悠介(伊予銀行)[4]●

※名前の後の番号はシード

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

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