10月9日夜、京都府福知山市にある田んぼで、68歳の男性が胸から血を流して倒れているのが見つかり、その場で死亡が確認された。近くに野生のシカがいたことなどから、警察は角で刺された可能性があるとみて調べを進めている。
ツノが心臓付近まで達したか
10月9日午後8時すぎ、京都府福知山市下天津の田んぼで、近くに住む68歳の男性が死亡しているのが発見された。
警察によると「近隣の方が農作業に行ったまま帰ってこない」と通報があり、警察や消防などが捜索を開始。およそ1時間後に田んぼの中で、男性が胸から血を流して倒れているのが消防署員によって見つかり、その場で死亡が確認された。
田んぼはシカよけのフェンスに囲まれていたにもかかわらず、田んぼの中に角の生えたオスのシカが1頭いたのが目撃されている。
シカはすぐに逃げたとのことだが、男性の胸には何かが刺さったような傷があった。
警察は11日の司法解剖の結果、死因は「棒状のような物」が心臓付近まで達したことにより起きた「心タンポナーデ」で、事件性は低いと発表した。
男性が発見された現場周辺には、シカのものとみられる足跡が多数残されており、動物のフンも発見されている。警察は田んぼで草刈りをしていた男性が、シカに襲われた可能性が高いとみて調べている。
「福知山市農林商工部林業振興課」の担当者は、シカなどの獣害対策についてこう語る。
「福知山市では、狩猟免許を保持した猟師さんによる『駆除隊』を結成しており、シカやイノシシなどの有害鳥獣の一斉捕獲を市内各地で実施しています。
捕獲頭数はシカだけで年間約4500~5000頭になります。今回のように野生のシカによって一般の方が亡くなったケースは初めて聞きました」
また、今回死亡した男性は、田んぼにシカよけのフェンスを設置していたとのことだが、市でも畑や田んぼに害獣が侵入しないよう、フェンスを貸出する対策を行なっていると語った。
ところで、捕獲されたシカやイノシシはどうしているのか。
「基本的には焼却処分をしています。場合によっては、埋設したり、猟師さんが個人的にジビエとして食べたりすることもあります」(同前)
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イノシシの牙で20針縫う大怪我
お隣の奈良県・奈良公園のシカは手厚く保護されている一方で、京都府内のシカは害獣扱いになっている。そのあたりはどう思うだろうか。
「福知山市では、農作物等の被害軽減を目的として、捕獲を実施しています。奈良県のシカが福知山市に来ることは距離的に難しいです。さすがにその距離は移動しないと思います」
同担当者はシカによる農作物の被害について次のように続けた。
「福知山市は盆地で山間部が多く、シカの生息域が広いため、早朝や夜間に多数見かけられます。獣害の中でも、シカによる農作物等の被害が一番多いです。
被害は年間を通してありますが、先月(9月)はシカに収穫前の稲穂を食べられる被害が多かったです。今は繁殖のための発情期なので、特にオスのシカは警戒心が高くなっています」
さらに「一般社団法人 京都府猟友会」の事務局にも話を聞いた。
「ごくまれに、『猟師さんがシカを仕留めるときに、角で刺されて怪我をした』という情報を聞くことがあります。
シカではありませんが10年ほど前に、70代男性の猟師さんがイノシシに突進され、牙で下から突き上げられ、20針縫う大怪我をしたこともありました。
他にも猟師さんたちが高齢化しているので、山で滑ったり転んだりして怪我をされる。害獣が増えることも問題ですが、後継者不足も今後の課題です」
福知山のシカがこれ以上増えないことを願うばかりだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班