何気ない会話にも、指導者としての飽くなき探求心をのぞかせる。
「大谷翔平って何が凄いの?」
ある日の横浜FCの練習後、学生時代に野球に打ち込んでいたという記者に向けて、中村俊輔コーチが問いかける。
アメリカのメジャーリーグで活躍する日本人のスーパースター。あれほどの“怪物”はどうやったら生まれるのか。そこに強い興味、関心があるのだろう。
「食事もカロリーを全部計算して、毎日遊びにも行かず、タバコもお酒もやらないで、きちっとメンタルも整えて。それを研ぎ澄ませたのが大谷選手なのかな。もともと規格違いなんだろうけど」
かつて日本代表で10番を背負い、唯一無二の足跡を残したファンタジスタでさえ、高みに上り続ける大谷という存在を前に、「自分はあそこまで行けていないから、その感覚がないんだよね」と静かにつぶやく。
「サイズがあって、素早くて。全部持っている感じ」。その素材に着目しつつ、「でも、もともとセンスがあって、いろんなことを吸収しようとして、真面目に取り組めば、大谷選手のようになれた選手って、これまでにも何人かいたと思うんだよね」と想像する。
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その特別な“原石”にもし出会ったら、自分は指導者としてどうすべきなのか。選手として大成できるように、どうアプローチするのがベストか。いかにサポートできるかに思考を巡らせる。
「(私生活とか)管理するのは自分? こっちが管理してはやっぱりダメなのかな。そういう監督とかコーチに出会えたら、何か変わるかもしれない。たとえば“俺と一緒にいる期間だけでいいから、お菓子とかお酒はやめようか”とか。分かんないけど」
自身の経験もある。「中学の時に覚えたよ」。横浜の下部組織時代、アスリートとして控えるべき項目が記されたプリントが配られた。栄養士のもとで食事の大切さを学んだ。「そういう年代でいかに刺激を入れさせられるか」も1つのポイントだと考えているようだ。
以前に「今は監督に、というよりも指導者」と話していた俊輔。選手の成長を手助けしたい――この日も「上のレベルに引き上げる、そういう存在になれれば」と口にした。
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)
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