今回、作成した水没危険度マップを見ればわかるが、ほんの4、5年前まで甚大な被害を出す水害に見舞われてきたのは、大半が九州を中心とした西日本だった。

 だが、こと日本海側においては、22年に山形県で史上初めて大雨特別警報が発令されたり、23年に豪雨被害にあった秋田で、今年7月にも堤防決壊や土砂崩れが起きる大雨が降り、死者が出るなど、直近の被災が目立つ。

「近海に暖流が常に流れている西日本は、台風も含め水害が多かった。だからこそ、その対策を常に更新してきた歴史があります。

 ですが北陸や東北では、大雪の対策はしていても、大雨の対策は西日本ほど進んでいません。地域の治水レベルは、過去にそこで起きた、最大級の水害の規模に合わせたものになります。昨今のようにその地域での『観測史上初』とか『記録的豪雨』が続けば、それが発生した時点で想定以上に危険な状況だ、ということです」(三重大学・立花義裕教授、以下同)

 すなわち、マップで「豪雨被害の危険性が高い」と選出されたエリアは、「地域の治水対策が十分でないかもしれない」「暖流の北上により、今後豪雨が引き起こされる可能性がある」という2つの面で懸念されているのだ。

 特に気をつけたいのは近隣に川の本流と支流の合流地点がある地域だ。台風でもそうだが、堤防の決壊や河川からの越水・氾濫が起きやすいからだ。

「極論を言えば、危ない場所に住まないように気をつけてほしいです。少なくとも今後、家を購入したり、引っ越しを予定している人は、水害への危機意識を強く持ってください。『自分の住んでいる場所は大丈夫』という認識はもう捨てるべきだと思います。

 ぜひ実施していただきたいのは、国土地理院が発行するような、高低差がわかる古地図を見ること。標高が周囲より低い、水害のリスクが高い場所は、本当に避けた方がいいですし、古地図で見て人が住んでいない地域は、そこで水害が発生したケースが多いからです」

 日本は今後、1年の半分が猛暑になるような国になる、と立花氏は言う。つまり日本中どこでも、豪雨で水没するリスクが高くなっている時代に突入してしまったのだ。

「日頃から最新の地域のハザードマップを確認し、雨雲レーダーや海面温度の確認をまめにしておくこと。今は詳細な気象情報を自分で簡単に確認できます。地震の備えはしていても水害対策までしている人はあまりいません。能登半島は地震と豪雨の間隔が10カ月ありましたが、これが1週間だったとしたら被害はもっと大きくなっていたはず。

 実際、18年の北海道胆振東部地震では発生前日に台風が直撃しているし、19年の東日本台風も直撃と同時に千葉県で震度4の地震が起きています。行政には水害と地震が同時発生した際の対策もお願いしたいですね」

 自然が荒ぶるこれからの日本で命を守るため、できることから始めるしかない。

*週刊アサヒ芸能10月17・24日号掲載

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