人気騎手の「電撃引退」の波紋が広がっている。
10月11日、日本中央競馬会(JRA)は騎手として重大な非行があったとして藤田菜七子(美浦・根本康広厩舎)騎手に騎乗停止処分を下した。同騎手は処分を伝えられた際、即座に引退の意思を伝え、引退届を提出。競馬ファンに大きな衝撃を与えたが、海外メディアも動揺を隠せていない。
近年の女性騎手のパイオニアとして日本の競馬界をけん引し、2019年のカペラステークス(コパノキッキング)で重賞初勝利を飾るなど、着実に腕を磨いていた藤田。海外レースにも積極的に参戦し、活躍の幅を広げていた人気ジョッキーの突然の引退報道は海外にも知れ渡っている。英国の大衆紙『The Daily Mirror』電子版は「日本のトップ女性ジョッキーが、携帯電話の使用違反でセンセーショナルな引退劇」と銘打った記事を配信。騎乗停止が発表された翌日の電撃引退に驚き、異例の関心を寄せている。
記事を見ると、「27歳のナナコ・フジタは16歳で競馬界に入り、日本の競馬ファンのアイドルになった。彼女はJRAで16年ぶりに誕生した女性騎手だった」と紹介。加えて、JRA所属の女性騎手として最多166勝を挙げた敏腕ジョッキーだったこと、19年にスウェーデンで開催された女性ジョッキーズ・ワールドカップで優勝したことなど、順風満帆な戦績だったと記述。今年8月に英国のアスコット競馬場で開催されたシャーガーカップに2度目の出場を果たしたことにも触れ、英国の競馬ファンにも名前が周知されていたことを伝えた。
藤田は2023年4月までに、調整ルームの居室内に持ち込み禁止の通信機器(スマートフォン)を持ち込み、通信アプリで外部と複数回通信していたことが9日に一部週刊誌の報道で判明。11日から裁定委員会の議定があるまで騎乗停止処分を受けていた。
『The Daily Mirror』の記事では、藤田が所属する厩舎の根本康広調教師が引退届を提出する際に彼女の心が折れてしまったと語り、「私の万年筆で(引退届を)書きながら、菜七子が泣いていた姿が忘れられません」という師匠の悲痛なコメントに衝撃を隠せない。また、同調教師が昨年5月に若手騎手6人が騎乗停止処分を受けた際に、藤田がJRAに携帯電話の使用を申告し、口頭で注意を受けていたことを明かし、再びの懲罰処分に疑問を呈していることを紹介している。
日本の競馬界に計り知れないインパクトを与えた人気女性騎手の引退。JRAの対応を含め、騒動はまだまだ続きそうだ。
構成●THE DIGEST編集部
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