フィラデルフィア・セブンティシクサーズのジョエル・エンビードは2022-23シーズンにシーズンMVPに輝いたが、昨季はケガの影響で39試合にとどまった。プロ入りしてから全試合出場したことがない状況下で、ギルバート・アリナス(元ワシントン・ウィザーズほか)は2023-24シーズンから導入されたルールにより、今後エンビードが正当に評価されることはないとの持論を展開している。
2014年のドラフト全体3位指名でシクサーズ入りしたエンビードは、最初の2シーズンは右足のケガで2度の手術を経験し全休。2016-17シーズンにようやくデビューを飾ると、翌2017-18シーズンからは7年連続で平均20点、10リバウンド以上を記録し、オールスターにも連続選出。2021-22シーズンは平均30.6点で自身初の大台突破、2022-23シーズンには平均33.1点で外国籍出身選手として初の得点王に輝くとともに、オールNBA1stチーム選出、シーズンMVP受賞も果たした。
しかし、昨季はオールスター前までリーグトップ相当の平均35.3点に、11.3リバウンド、5.7アシスト、1.1スティール、1.8ブロック、フィールドゴール成功率53.3%とMVP級の成績を記録するも、半月板を負傷し左ヒザの手術を受けるなど、球宴前の時点で20試合を欠場し、シーズンMVPやオールNBAなど個人賞受賞の条件である65試合出場を満たせず。結局、シーズン終盤に復帰するも、わずか39試合の出場(平均34.7点、11.0リバウンド、5.6アシスト、1.2スティール、1.7ブロック)にとどまった。
NBAは2023-24シーズンから新たなCBA(労使協定)が適用されたことで、シーズンMVPやオールNBAチームに選出されるためには、レギュラーシーズン82試合のうち最低でも65試合以上に出場しなければならなくなった。アリナスは自身がホストを務めるポッドキャスト番組『Gil’s Arena』で、エンビードはこの10年で最高の選手としながらも、最低65試合出場のルールがライバルであるニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)に追い付くのを妨げている唯一のものだとの見解を述べた。
「20年後には誰もこの歴史的な出来事を覚えていないだろう。彼はルールのせいでMVPを失ったんだ。彼は公平に歴史に名を残すことはできないし、過去について考えさせられる。これらのスタッツの一部が“本物”ではないにもかかわらず、我々はそのスタッツが正統だと見なしている。他の選手に起こっているわけだからね。エンビードはそういう選手の1人になるだろう」
エンビードは過去4年でMVP3回を受賞しているヨキッチと並ぶ、現代最強センターの1人。レギュラーシーズンの直接対決は6勝2敗でエンビードがリードしており、個人成績でもヨキッチの平均22.3点、10.1リバウンド、6.9アシスト、1.1スティール、1.1ブロックに対し、エンビードは平均27.6点、11.3リバウンド、4.4アシスト、1.3スティール、2.0ブロックとそれを上回るインパクトを残している。それらも正しくは評価されていないとアリナスは考えているようだ。
「彼はおそらくリーグのベストプレーヤーだ。ヨキッチと№1の座を争っているが、レガシーがそれを反映するとは思えない。直接対決で言えば、エンビードは相手(ヨキッチ)を圧倒している。65試合出場ルールを導入してからの成績を遡れば、こうした賞の多くが取り除かれていることが分かるだろう」
30代となり、今年はパリ五輪でアメリカ代表デビューも飾ったエンビード。今後のキャリアで、どこまで自身の評価と価値を高められるか、注目だ。
構成●ダンクシュート編集部
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