千葉県・房総半島を走る第三セクター鉄道のいすみ鉄道が脱線事故を起こしたのは10月4日朝のこと。通学の高校生などを乗せていたが、幸いけが人はいなかった。同社は7日に行われた会見で「10月中の再開を目指す」としており、現在もバスによる代替輸送が続いている。

 脱線の原因について古竹孝一社長は、今も調査中としながらも「枕木の劣化が事故の一因」との見方を示している。

 実は、いすみ鉄道は23年1月に保線の不備を理由に国土交通省関東運輸局から行政処分を受けていた。13年にも同様の脱線事故を起こしており、この時も枕木の腐食が原因だった。

 だがこれは、いすみ鉄道に限った問題ではないようだ。鉄道会社の保線部門担当者は「他人事ではない。明日は我が身かもしれない」と話す。

「地方の私鉄や三セク鉄道にとって枕木の劣化、高温による夏場のレールの歪みは切実な問題。JRや大手私鉄のように線路保存費に余裕があるわけではないため、限られた予算の中で少しずつやるしかないんです」

 国土交通省は地方の鉄道会社で脱線事故が相次いだことを受け、18年に中小の私鉄、第三セクター鉄道に向けて、枕木を木製からコンクリート製に交換するよう通知。いすみ鉄道も毎年約300本ずつを交換していた。だが、今回の事故現場の枕木はまだ木製で、11月20日までに交換を予定していた間際の出来事だった。

「地方鉄道は単線が多いので脱線となると上下線ともに不通となり、今回のように復旧まで長引く場合もある。そうなると代替バスを含む復旧費用で出費がかさんでしまいます。経営規模が小さいから1つの事故のダメージが途轍もなく大きいのです」(前出・保線担当者)

 すぐにでも枕木を交換したくても現実には簡単ではない。一番もどかしさを感じているのは鉄道会社なのかもしれない。

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