フォーミュラEの”急速充電”ピットストップ、ついに実現? プレシーズンテストの模擬レースで実践

 フォーミュラEは、11月にバレンシアで計4日間行なわれるプレシーズンテストの中で行なう模擬レースにおいて、急速充電技術を使った”アタックチャージ”コンセプトを試すようだ。

 シーズン9(2022-23年)から導入されたフォーミュラEの第3世代マシン『Gen3』において、急速充電技術を使ったピットストップに関する議論は長年続けられてきた。Gen3の入札当初から、『レース中に1回、30秒以内の急速充電セッションが実行される』という要件が記載されていたのだ。

 このコンセプトは当初、Gen3初年度のシーズン9中に導入が予定されていた。ドライバーがピットストップしてバッテリーの10%分の電力を充電することで、現在運用されているアタックモードとは異なる戦略的要素になると期待されていた。

 しかし、フォーミュラEは新車の導入により負担がかかっている中でテストもせずに実施するべきではないと判断。そしてシーズン10では様々な場所で、公式練習中にこの技術をテストするなど、改善を続けてきた。

 レース中の急速充電が成功すれば、市販EVの消費者に大きなインパクトを与えることができるだろう。だが信頼性への懸念が残っていたことから、これまでレースで使用されることはなかった。

 FIAのフォーミュラEにおける競技責任者であるパブロ・マルティーノは、motorsport.comに次のように語った。

「それは大きな挑戦だ。充電器側だけでなく、バッテリー側でも限界に挑戦している」

「今年の夏の(オフシーズン)期間中、各メーカーはこの技術にアクセスすることができた。彼らはその技術を導入してテストを行なっている」

「対処すべきオペレーション上の修正がいくつかあるだけで、技術的な問題は何もない」

「システムがどのように運用されるかについて、技術的な観点から言えば、現在決定の最終段階にある」

 各チームはオフシーズンのテスト中から急速充電器を使用することができ、その運用手順の確認・改善に取り組んできた。バレンシアでのテストでも、それが続けられることになる。

 11月4日から4日間にわたって実施されるテストでは、急速充電によるピットストップが行なわれる模擬レースも予定されており、チームとFIAはダイナミックなレースシチュエーションで急速充電が使用されるシーンを目の当たりにすることができる。

 昨年のプレシーズンテストも、同様に模擬レースでピットストップのシミュレーションは行なわれたが、当時は信頼性の低さや安全性への懸念が残る形になった。

 マクラーレンのチーフエンジニア、アルバート・ラウは「運用の面では、かなり(実戦投入に)近づいている」と語った。

「だがまだ導入は決まっていない。私はみんなが納得するブーストチャージの量について決まっていないんだと思う」

「レースごと、マシンごとのブーストチャージについて話し合っている。そしてシーズンに入る前に、何百回ものブーストチャージのテストが必要になる」

「ル・マンに行って24時間のテストをするわけではない。だが事前に合計36時間のテストがあるんだ」

 しかし、たとえこの技術が信頼できるものだと証明されたとしても、来たるシーズン11に導入される保証はない。

 マルティーノは、レースにこの手順を加えることで見ごたえが損なわれたり、新たな問題が生じたりしないことを確認するためには、さらなるシミュレーションと研究が必要だと認めている。

「このアタックチャージがレースにどのような影響を与えるのか、理解する必要がある」

「たとえ技術があったとしても、レースで何が起こるかを理解する必要がある。最終的な決定にはそれも考慮されるだろう」