ドイツ人智将トゥヘルのイングランド代表監督就任に現地メディアやOB選手は期待と不安…「驚異的な成功か、完全な失敗のどちらか」

 FA(イングランド・サッカー協会)は10月16日、イングランド代表監督にドイツ人のトーマス・トゥヘルが就任することを発表。アシスタントコーチにアンソニー・バリーを迎えての新体制は、来年1月1日から始動することになるという。

 EURO2024終了後にガレス・サウスゲイト前監督が退任して以降、リー・カーズリーが暫定監督を務めている「スリーライオンズ」の舵取りは、スベン・ゴラン・エリクソン(スウェーデン)、ファビオ・カペッロ(イタリア)に次ぐ同代表史上3人目となる外国人指揮官に託されることとなった。

 51歳のトゥヘルは、シュツットガルト、アウクスブルクのユースチームを指導した後、2019年にマインツでトップチームの監督に就任すると、2015年にはドルトムントを指揮。2018年からは国外での挑戦を始め、パリ・サンジェルマン、チェルシーというビッグクラブの監督を歴任して、2023年にはドイツに戻って王者バイエルンで采配を振るった。パリSG、バイエルンではリーグタイトルを獲得し、チェルシーではチャンピオンズ・リーグ、クラブワールドカップ優勝と、ほぼ全てのタイトルを手中に収めている。
  バイエルンでは昨季の不振によって2025年夏までの契約期間を満了することなく離脱しており、その去就が注目されていた豊富な戦術と指導のアイデアを持つ智将は、「イングランド代表を率いるという名誉を与えられたことを大変誇りに思う。長い間、この国のサッカーに対して個人的な繋がりを感じており、すでに素晴らしい瞬間を幾つも経験してきた。この国を代表する機会を得ることは大きな特権であり、特別で才能溢れる選手たちと一緒に仕事ができることにワクワクしている」と最初のコメントを発している。

 サッカー界の大きな関心事のひとつだったイングランド代表監督人事に対してFAが出した今回の答えについては、様々な反応があるようだが、代表キャプテンで昨季はバイエルンで共闘したハリー・ケインは英国公共放送『BBC』に対し、「トーマスのことは昨年からよく知っていた。素晴らしいコーチであり、人物だ」と新たなボスに歓迎の意を示した。

 元スコットランド代表のウインガーで、現在は同メディアでコメンテーターを務めるパット・ネビンは、優れたコーチである一方で、頑固で付き合いづらい面もあるというトゥヘルについて「驚異的な成功を収めるか、完全な失敗となるかのどちらかであり、その中間はないだろう」と予想する。 一方、元イングランド代表DFのマシュー・アップソンは、「非常に良い人事だ。彼はタイトル歴、率いたクラブの実力、人柄と、ほとんどの条件を満たしている。これまでメディアとの難しい状況にも対処してきたこともあり、この国の代表監督として十分に通用するだろう」と、ポジティブな印象を明かした。

 そして日刊紙『The Guardian』は、「FAの幹部たちは、客観的に見て非常に印象的なリクルートを行なったと言えるだろう。トゥヘルの就任は、イングランド代表に大きな変化をもたらす。これまでにイングランドのクラブで指揮を執り、チャンピオンズリーグ(カップ時代も含む)を制した監督は初めてであり、彼は特別な存在だ。3シーズンの間に2つのクラブをCL決勝に導いた経験を持ち、そのうち1回で優勝も果たした」と、ここまで実績を評価しながら、以下のように続けた。

「イングランド代表が長年培ってきたボール支配型のスタイルを保ちながら、実際に重要な試合で勝つための実践的なノウハウを注入するという目標があるのであれば、チェルシーでトッド・ベーリー会長の奇妙なチーム作りに共感できずに解任されたことさえも、トゥヘルの適任ぶりを示す証拠になるかもしれない」
 「残る疑問はひとつだけだ。トゥヘルがこの仕事を上手くやれるのか? 彼の採用はFAの大きな期待を伴っており、彼がイングランド代表に成功をもたらすかどうかが注目される。輝かしい実績を築いてきた一方で、その性格から扱いが難しい人物であるということもあり、このドイツ人の代表監督就任はファンにとっても、非常に興味深いものとなるだろう」

 もちろん、期待だけでなく不安点にも言及しており、「トゥヘルは戦術のスーパーオタクであり、またディテール重視の指導者でもある。そんな彼が、代表チームのリズムにどのように適応するのだろうか? 彼はコーチングを天職と考えているが、一方で馬鹿げた質問には苛立ち、奇妙な独自のルールを持っている。また代表監督ならではの、例えばウィリアム王子との会合や料理学校での講演といったサッカー以外の活動が多くなることに、どのように適応するのだろうか」と綴っている。

構成●THE DIGEST編集部

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