【ドラフトでヤクルトが狙うべき選手】数ある補強ポイントの中でも村上の後継者候補獲得が急務。強打の外野手と即戦力左腕も指名したい<SLUGGER>

 いよいよ10月24日にプロ野球ドラフト会議が行われる。各チームの育成状況や弱点を踏まえた上で、「誰を指名するか」ではなく「誰を指名するべきか」という観点からドラフトを展望する。2年連続Bクラスに沈み、近く村上宗隆のメジャー挑戦を控えるヤクルトはどのような戦略で臨むべきだろうか。

【基本方針】
バランス型

【補強ポイント】
●次代の中軸打者
●既存戦力を刺激する強打の外野手
●完成度の高い即戦力左腕

【理想の指名】
1位:石塚裕惺(内野手/花咲徳栄高)
2位:伊原陵人(投手/NTT西日本)
3位:吉納翼(外野手/早稲田大)

 2021~22年のリーグ連覇の後、2年連続で5位に沈んだヤクルト。今季は22年のドラフト1位・吉村貢司郎がエースになる兆しを見せたが、他の“ドライチ投手”たちは十分に稼働せず、チーム防御率はリーグ最下位に沈んだ。リリーフも連覇を支えた田口麗斗と清水昇の不調が響き、勝ちパターンを形成するのに時間を要した。野手陣はサンタナ、村上、長岡秀樹を筆頭にレギュラー格は強力ながら、故障者の穴を埋める控え選手との差が如実に出た。村上のMLB挑戦が2026年に迫る中、日本人の次世代の中軸候補は現状空位で大きな課題となっている。

 野手が1年目からものになることが極めて稀な現在の潮流を踏まえると、打力なら今の大学生トップクラスに劣らぬ高校生ショートの石塚裕惺(花咲徳栄高)を推したい。パワーもさることながらバットの入れ方が上手く、選球眼も素晴らしい。村上のようにプロ2年目には一軍の舞台で活躍し始めることさえ目に浮かぶようだ。
  石塚に比べれば時間はかかるだろうが、宇野真仁朗(早稲田実業)は夏の甲子園で木製バットを使ってアピール。高低の攻めに苦戦することは織り込み済みで、中長期的に打力を伸ばせると考えれば候補に入る。夏は早期敗退してしまったが、今坂幸暉(大院大高)は打球角度をつけることに長けた打者で、左打者の中では将来のクリーンアップ候補だ。打ち勝つ必要のある神宮球場を本拠にしていることを踏まえれば、強打の高校生内野手は順位を問わずマストで指名したい。

 塩見泰隆が大怪我を負い、青木宣親と山崎晃大朗が引退した外野には、来季の開幕スタメン争いができる即戦力を補強したい。六大学通算13本塁打の吉納翼(早稲田大)は広角に打球角度をつけられるパワーヒッターで、既存戦力と差別化ができる。今年は得意なゾーンに来たボールを仕留める確実性が上がるなど、4年生になってなお進化の途上にある点が魅力だ。右打者であれば広角にライナーを打ち分け、守備でも強肩が武器の寺岡丈翔(徳島インディゴソックス)、名門社会人チームで上位打線を担う中尾勇介(東京ガス)も走攻守に力強さがあり、今のチームにフィットしそうだ。

 また、一軍で稼働した先発左腕が高橋奎二と山野太一の2人しかいなかったことを考えると、完成度の高い左腕も上位で指名したいところ。当然、金丸夢斗(関西大)をいの一番で……という声は挙がるだろうが、1年目から稼働してほしい点を考えると、社会人に入ってから球速を上げ、球種も多彩な伊原陵人(NTT西日本)を推したい。大学時代からすべてのシーズンで公式戦登板を続けている故障耐性は、今のチームに必要な要素だろう。

 今年の大卒と同年齢で、スタミナ面の課題を克服してチームの主戦投手となった吉田聖弥(西濃運輸)も候補だ。クイックの使い方など投球術に長けたタイプで、都市対抗の舞台でも動じないメンタリティも評価したい。

 2年連続で下位に沈んでいるチームだけに、はっきり言って補強ポイントは多い。すべてをドラフトだけで補うのは難しい前提で、より強みを伸ばすことを考えたドラフトが結果的に理想的なものと言えるのではないだろうか。

文●シュバルベ

【著者プロフィール】
オリックス・バファローズと東京ヤクルトスワローズのファン。卒業してから足を運んだ東京六大学野球で東大の勝ちを見届け、アマチュア野球”沼”にも片足突っ込んでしまった野球好き。X(旧Twitter)IDは「@love_uni31」。

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