4日間にわたって行なわれたエキジビションマッチ「シックス・キングス・スラム」(10月16日~19日/サウジアラビア・リヤド/室内ハードコート)は最終日の現地19日に3位決定戦が行なわれ、今年11月のデビスカップ(男子国別対抗戦)を最後に現役から引退する元世界ランク1位のラファエル・ナダル(スペイン/現153位)が登場。四大大会最多の24勝を誇る盟友ノバク・ジョコビッチ(セルビア/同4位)と対戦したが、2-6、6-7(5)のストレートで敗れ4位に終わった。
今年初めて開催された「シックス・キングス・スラム」は、その超高額賞金でも話題となっているエキジビション。計6人の出場選手には、最低150万ドル(約2億2400万円)の賞金が保証されているが、これは今年の全米オープンでテイラー・フリッツ(アメリカ/現6位)が手にした賞金(準優勝/180万ドル)に迫る金額だ。
ナダルとジョコビッチは準決勝から登場。ナダルは同胞で世界2位のカルロス・アルカラス(21歳)に、ジョコビッチは現世界王者のヤニック・シナー(イタリア/23歳)に敗れ、共に3位決定戦に回っていた。
両者は非公式ながらも今回が61度目の顔合わせで、過去の対戦成績ではナダルが29勝31敗と僅差で負け越し。直近である今夏のパリ五輪2回戦ではナダルが1-6、4-6でジョコビッチに完敗していた。ナダルの現役中にこの対決が見られるのは今回が最後となる見込みだ。
コイントスに勝ってサービスを選択したナダルは第1ゲームでいきなりブレークを献上。以降はミスを重ねながらも何とか相手に食らいついていくが、流れを変えるまでには至らず。第7ゲームでもサービスダウンを喫し、そのまま第1セットを落とした。
第2セットは一転、2人のレジェンドが素晴らしい打ち合いを繰り広げる。第1セット同様第1ゲームで早々に先行されたナダルだったが、直後の第2ゲームでは鋭いバックハンドやフォアハンドのパッシングショットを決めてポイントを重ね、ブレークバックに成功。しかし第9ゲームでは疲労からかナダルのプレーの質が落ち、ラブゲームでブレークを許してしまう。
それでもここからがナダルの真骨頂。ジョコビッチのサービング・フォー・ザ・マッチとなった第10ゲームでラリー戦をことごとく制し、相手のマッチポイントもセーブ。驚異の粘りを見せて値千金のブレークバックを果たすと、その後は両者キープを続けて勝負の行方はタイブレークへと委ねられる。だがここでのナダルは最後まで冷静なプレーを続けたジョコビッチを崩しきれず、1時間30分で力尽きた。
試合後には笑顔で熱いハグを交わしたナダルとジョコビッチ。間もなく栄光のキャリアに別れを告げる“赤土の王者”はオンコートインタビューでは、少々感極まった様子でファンへの謝意を示すとともに、宿命のライバルへの感謝の言葉を口にした。
「ご来場いただいた皆さん、本当にありがとう。素晴らしいイベントでした。ノバクにも感謝していますし、彼とコート上で共有してきた全ての瞬間に感謝しています。本当に素晴らしいライバル関係で、いつも僕に全力を尽くさせてくれました」
「プロとしての夢を叶えられたことは名誉であり、これまで世界中から長年にわたって受けた温かい応援には、感謝してもしきれません。本当に幸せでした。これからもテニスをとても恋しく思うことでしょう」
対するジョコビッチも自身を大きく成長させてくれたナダルへ感謝のコメント。さらには引退後に2人で“一緒にやりたいこと”も明かした。
「彼についてはどこから話せばいいのか分からないが、初めて対決した試合から20年後に60回も対戦するなんて誰も思わなかったでしょう。私はあなたに最大限の敬意を抱いています。彼は素晴らしいアスリートであり、素晴らしい人でもあります。我々のライバル関係は信じられないほど激しいものでした。ですから、引退後はベンチに座ってお酒でも飲みながら、一緒にテニス人生を振り返る機会があればいいなと思います」
なお同日に実施された決勝ではシナーがアルカラスを6-7(5)、6-3、6-3で下し初優勝。この結果シナーはテニス史上最高額となる賞金600万ドル(約8億9600万円)を獲得した。
文●中村光佑
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