劇的逆転弾を演出した湘南の畑大雅。幼馴染の広島DF中野就斗と激しくマッチアップ「シュウトのところは強く行こうと...」

「もっと長い時間、やれればよかったですけど、楽しい時間でした」

 こう語ったのは、湘南ベルマーレのDF畑大雅だ。J1第34節のサンフレッチェ広島戦(2-1)で後半の頭からホームのピッチに立った背番号3は、広島のDF中野就斗と互いにウイングバックとしてマッチアップ。畑と中野は1学年差(畑がひとつ上)だが、小学校と中学校で同じクラブ、AZ’86東京青梅に所属した幼馴染だ。

 小、中学校時代の畑は、現在よりも攻撃的なプレーヤーだった。一方、中野は守備的なポジションでの出場が多かったという。そこから互いに成長し、歳を重ねる度に主戦場を変え、同じウイングバックの選手としてプロの舞台で火花を散らした。

 畑は同郷のプレーヤーとJ1で対戦する感慨深さを口にする。

「ウイングバックでマッチアップするのは凄く新鮮でしたね。前半にゴールを決められていたし、起点になられた場面もあったので、シュウトのところは強く行こうという狙いで入りました。昔のシュウトはドリブルが下手だったんですけど(笑)、最近の試合を見ると一瞬のスピードで抜き去ったりしていた。そこだけは警戒して対応しました」
【動画】畑が演出した田中の決勝弾!
 畑が語る通り、中野は前半にインパクトを残した。28分、加藤陸次樹の左からの浮き球パスを右サイドで受けると、ワントラップから右足一閃。強烈なミドルシュートをネットに突き刺した。また、得点以外のシーンでも上下動を繰り返して攻守に躍動し、1点リードでの折り返しに寄与していた。

 そこで“中野封じ”を託されたのが畑だった。ハーフタイムに松村晟怜との交代で投入された22歳は、コンディションの問題で全体練習への復帰が広島戦の2日前だったというが、準備不足を感じさせないプレーを示す。48分に湘南が福田翔生のゴールで追いついたなかで、畑は中野と攻防を繰り返しながら、いくつかのチャンスを創出した。

 そして79分に広島のCB荒木隼人が負傷交代し、中野が3バックの中央に入った後、畑が貴重な仕事を果たす。1-1で迎えた90+2分、畑が相手の最終ラインの背後を取り、身体を張って福田からのパスを収めると、ボックス内に走り込んだ田中聡の劇的な逆転弾をお膳立て。本人は「あれは聡がよくやってくれた。ありがとうって感じでした」と語ったが、首位チームを破る見事なアシストだった。

 結果、2-1で湘南が勝利したが、東京都青梅市で切磋琢磨した畑と中野が大いにアピールした一戦は、互いにとってメモリアルなゲームになったはずだ。さらなる切磋琢磨を経て、次なる目標はふたり揃っての日本代表入りか。今後が楽しみだ。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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