身を粉にしてボールを奪い、細かなタッチで相手を翻弄し、ダイナミックに攻撃に参加した――。10月19日のヘーレンフェーン戦(3−0)で久々にスタメン復帰した佐野航大は『NECのダイナモ』として技術、パワー、走力、献身性、意外性、頭脳、闘志を惜しげもなく出し切った。
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見ていて楽しかった、と伝えると、破顔一笑、佐野は「俺も楽しかったです。『試合をしたい』という気持ちが出たんだと思います」と答えた。
PSVはいま、オランダでもっとも魅力的なサッカーを繰り広げ、しかも王者としての貫禄に満ち溢れている。対戦相手は「PSVにひと泡吹かせてやろう」と意気込むが、なかなか上手くいかない。NECが9月14日に敵地アイントホーフェンに乗り込んだとき、佐野もこの罠にハマった。佐野はこの試合で、ゴール前に抜け出そうとしたMFフース・ティルの肩に背後から両手をかけて倒し、PKを与えたばかりでなく、わずか開始9分でレッドカードをもらってしまった。数的不利の劣勢のなか、NECは完敗ながらもなんとかスコアーを0-2でまとめた。
「あれは手で行くのではなく、足で行ったほうが良かった。(仮にPKだったとしても)イエローカードだったろうし…。冷静さが足りなかった。たぶん、気合が入ってたんだと思います。でも、あそこから学べることはたくさんあると思うので、そんな悲観してはないです」
出場停止処分は1試合だけだった。しかし練習中に負傷したため復帰戦は10月5日のNAC戦(0-1)まで持ち越されたうえ、出場時間はわずか30分弱に留まった。だから佐野にとって今回のヘーレンフェーン戦は8月31日のフォルトゥナ・シッタールト戦(3-0)以来、本当に久しぶりに“試合をした”という充実感が残るものだった。
MFの全ポジション、左右ウイングをこなす多機能プレーヤーとして知られる佐野は、ヘーレンフェーン戦でセントラルMFを務めた。タスクその1は、相手のトップ下、スマンスをピッチから消すことだった。
「(スマンスは)速くて縦にボールを運ぶ力があるんで、けっこう嫌だった。でもセンターバックと一緒に協力して、コミュニケーションを取りながら(スマナスを抑えることが)できたと思います」
1-0でリードしていた39分には、自陣から股抜きを交えた3人抜きの長駆ドリブルでFKを奪うビッグプレーを見せた。この時間帯はNECのリズムがいったん途切れたとき。膠着状態を打破できるボランチの存在はチームにとってありがたい。
左サイドから右ウイングへ出した美しい軌道のサイドチェンジ。ルーズボールへの鋭い感覚。相手の意表を突く足の出し方でボールを回収。左サイドにいたはずなのに、いつの間にか右ポケットに侵入するフリーランニング――。後半に入ると、佐野の動きがより軽やかに、よりダイナミックになっていく。
65分に生まれたチームの3点目は、佐野が自陣から斜め前の味方に出したパスが起点だった。75分には相手FWと左サイドで1対1になったCBナウティンクが抜かれることを見越し、佐野がしっかりカバーしてピンチを未然に防いだ。
「そういう気の利くところは、やっぱり 日本人の良さだったりすると感じます。だから自分がボランチをやるにあたって『気が利くプレー』というのは必要です。そこでボールが取れよう取れまいが、ボールが来ようが来まいがやり続けることに意味があると思います」
この日の佐野には『ダブルボランチの一枚』ではなく『自分が率先して試合をコントロールする』という気概に溢れているように見えた。PSV戦以降、なにかMFとして思うところでもあったのだろうか。
「試合2日前の練習かな。『6番(アンカー)と8番(リンクマン)の位置でしっかりボールを動かしてほしい』と言われたので、ただそれをやっただけです」
忠実にタスクをこなしたら、結果的に味方を操り、自身も輝いた。そんなことを言いたかったのだろう。しかし、実際には与えられた仕事に『気の利くプレー』というスパイスを加えたことで、佐野航大オリジナルの攻守に多岐に渡るリズミカルなプレーが生まれたのだろう。
この日の出来は佐野本人にとっても満足の行くもの。
「これを維持じゃなくて、もっと向上させていくっていうところにフォーカスしたい。今日もやるべきことをやって、それをやり続けながら自分の中でリズムを作っていって、どんどんプレーが良くなっていった。だから練習から自分の課題に取り組んでいきたいです」
その課題とは?
「前の選手をもっと動かせるように…。やっぱり英語ですね。まだ『右』とか『左』とかしか咄嗟に(英語の指示が)出ないです」
それは試合中に修正する力のことか?
「そうです。自分が思ったことだったり、こうしたほうがいいといったことはやっぱり伝えたいのでね。伝えられることは伝えてるけど、まだまだそこは足りない。仲間とのコミュニケーションもそう。自分はこれがゴールじゃない。まだまだ先は長いんで、もっと貪欲に上手くなりたいです」
84分、交代を告げられた佐野がバックスタンド、ゴール裏、メインスタンドとピッチの周りを半周しながらベンチに向かうと、次々に観客が立ち上がり、遠くで続行する試合を見ることなくスタンディングオベーションを贈った。得点やアシストというひと目で分かる結果はなくとも『アミューズメント』と『いぶし銀』を両立させる21歳の至宝のことを、ナイメーヘンの人びとはこよなく愛している。
取材・文●中田 徹
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