ゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーは、来たる2024-25シーズンの年俸が5576万ドル(約83億4000万円)でリーグトップだ。キャリア当初はのちに“リーグの顔”となるような評価は受けていなかったが、そのおかげでウォリアーズは王朝を築くことができたと、元NBA選手のギルバート・アリナスは見解を述べている。
2009年のドラフト全体7位指名でNBA入りしたカリーは、3ポイント全盛のトレンドを作り出し、バスケットボールそのものを変えたとも言われる。リーグ歴代最多となる3747本の3ポイント成功をはじめ、ウォリアーズを4度のリーグ優勝に導き、今夏のパリ五輪ではアメリカ代表の金メダルにも貢献するなど、引退後の殿堂入りは確実視されている。
今となってはカリーが史上最高のシューターの1人であることに疑いの余地はないが、3年目の2011-12シーズンは足首のケガでわずか26試合の出場に終わるなど、キャリア序盤は今ほどの評価は受けていなかった。
しかし、そのおかげで2014-15シーズンから5年連続でNBAファイナル進出、8年間で4度の優勝を果たす王朝を築くことができた、との見解を示すのがウォリアーズのOBでもあるアリナスだ。自身がホストを務めるポッドキャスト番組『Gil’s Arena』で次のように語っている。
「王朝は悪い契約から生まれる。悪い契約を結べれば、フランチャイズの発展を手助けする。ニューヨーク(ニックス)の(ジェイレン)ブランソンのようにね。あの契約は将来的に彼らを助けるだろう。多くの金額を節約できるからね。ステフが優勝した時、彼はチームで3番目に高い年俸の選手だったんじゃないかな?」
アリナスの言う「悪い契約」とは、その選手の実力から見て、市場価格より安く抑えられた契約のことを指す。
2022年7月にニックスに移籍したブランソンは今年7月、4年総額1億5650万ドル(約234億円)で延長契約を締結。来夏には5年総額2億6900万ドル(約400億円)の巨額契約を結ぶこともできたなかで、チームの強化を優先し、総額1億1200万ドル以上もの減額を受け入れたのだ。
カリーは4年総額1270万ドル(約19億円)のルーキー契約でスタートし、2012年に4年総額4400万ドル(約66億円)で契約延長したが、当初から今のような活躍をしていればもっと“良い契約”を結べたことは間違いない。実際、ウォリアーズ王朝が始まった2015年の優勝当時、カリーの年俸はデイビッド・リー、アンドリュー・ボーガット、アンドレ・イグダーラに次ぐチーム内4番手に過ぎなかった。
アリナスは言う。
「4年総額4400万ドルの契約。もし(その契約内容で)オールスター出場2回、2度のMVPに輝くような選手になったら万々歳だろう。4年後になれば、もっと高いオファーを出せるし、4年間で選手を増やし続けることができる。
カリーは悪い契約を結び、王朝を作った。もしカリーがもっと早く今の姿になっていたら、ルーキーMAX契約を結んでいただろう。それはのちのちハンディキャップを背負うことになったはずだ。でも、彼が最初に悪い契約を結んだおかげで、結果的に王朝を生んだんだ」
ウォリアーズの同僚であるドレイモンド・グリーンも、マイケル・ジョーダンやスコッティ・ピッペンを擁したシカゴ・ブルズのドキュメンタリー『ザ・ラストダンス』を観たあと、『UNINTERRUPTED』のインタビューで「NBA史上最高の2チーム(ブルズとウォリアーズ)は、悪い契約で築かれたと思う」と語っていた。
近代NBA最大の王朝を築いたウォリアーズ。それは稀代のシューターであるカリーの実力はもちろん、若手時代に結んだ“格安契約”がなければ為し得なかったかもしれない。
構成●ダンクシュート編集部