10月1日の組閣後、わずか8日後に「国民の信を問うのが大義」として衆議院を解散、総選挙に踏み切った石破総理。「日本創生」を掲げ3つの公約を提示しているが、看板政策になっているのが「2020年代に最低賃金平均1500円以上を目指す」というものだ。

 これについては、立憲民主党や共産党も同じ公約を掲げており、実現は時間の問題だろう。労働者にとってはありがたい話だが、会社経営側は「経営が立ち行かなくなる」と猛反発する。人件費等の高騰を価格転嫁することが競争力の面でなかなか難しいからだ。

 仮に最低賃金が1500円以上と定められた場合、それを下回ると、最低賃金法違反で雇用主に罰金が科されたり、差額の支払いが命じられたりするが、じつは「抜け道」も存在する。

 例えば、そのひとつが裁量労働制だ。裁量労働制は労使で決めた時間分だけ働いたと“みなす”制度で、働き方改革の一環として政府が推奨している。18年2月の国会で加藤勝信厚生労働大臣(当時)は、「裁量労働制なら、最低賃金割れでも違法ではない」と述べている。裁量労働制で働いている人の中には、給料を月の就業時間で割ると最低賃金以下だった…ということも少なくないはずだ。

「この他にも、業務委託や請負契約も最低賃金制度の適用外。運送業界では事業者と個人事業主であるドライバーが実質的には雇用関係にあっても、業務委託契約であるために規制なく働かされるというケースが多く問題になっています。最低賃金が上がっても、その代わりに同様の雇用形態が広がれば意味がありません」(全国紙記者)

 最低賃金制度は、会社で働く正社員・契約社員・臨時社員・パート・アルバイトら、すべての労働者とその使用者に適用されるもの。それでも合法的に賃金を抑えられるのであれば、企業側がその方法をとらない手はないだろう。

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