画像はAIで生成したイメージ

厚生労働省が行った統計では、2023年時点の介護分野で働く外国人の在留者数は約4万人。日本の介護業界における慢性的な人手不足と日本人の高齢化に伴う需要の増加が外国人介護職員の受け入れが進む背景となっている。

そこで、今回は3名の在日外国人にそれぞれインタビューを敢行。日本の介護業界が抱える不可解さ、そして問題点をあぶり出した。

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――介護士になったきっかけを教えてください。

A子さん(23歳・中国籍)「技能取得のためです。中国も高齢化社会なので介護のスキルを身に着けることは今後の人生で絶対に生かせると思いました」

B子さん(26歳・ベトナム籍)「人の役に立つ仕事がしたいと考えていたので、その中で一番身近に感じられたのが介護士だったからです」

C子さん(30歳・フィリピン籍)「生活のためです。求人もたくさんあるので、これならずっと働けるなと思いました」

――嬉しいこと、つらいことを教えてください。

A子さん「仕事として当たり前のことをしているのに感謝されることは嬉しいです。職場のみんなが優しいのも嬉しいです。つらいのは肉体的にハードなこと。肩や腰、背中などがいつも痛いです」

B子さん「お世話をしているお年寄りが楽しそうにしていると私も嬉しくなります。大事な仕事とか責任のある仕事を任された時も幸せな気持ちになります。つらいと思ったことはありません」

C子さん「嬉しいところはちゃんと休みがとれて、お給料がもらえるところですが、つらいのは、そのお給料が安いこと。介護士はお年寄りの心と身体、両方の世話をして、さらに生活の手伝いもします。なんでもしてあげてるわりにお給料が安くて悲しくなります」

何でも時間通りで刑務所みたい

――職場への不満や要望や疑問など、なんでも感じていることを教えてください。

A子さん「おむつ替えや入浴介助などは同性同士で対応すれば良いと思います。おじいさんの世話を私にやらせている男性介護士がおばあさんの世話をする意味が分かりません。男性の世話を女性介護士がしたらセクハラされる危険性があるし、男性介護士が女性の世話をしたら、セクハラする危険性があるからです。お年寄りの暴言や暴力など、非常識な行動を許してしまうことも納得が行きません。尊重することと甘やかすことは同じではないと思うからです」

B子さん「言葉使いや接する時の態度で、お年寄りを子供扱いするのが気になります。『トシを取ると子供に返るから』と言われましたが、時々バカにしているように見えることがあります。子供のように扱うのであれば、もっと愛情を持って丁寧に対応するべきだし、お年寄りに対しては敬う気持ちを忘れてはいけないと思います。それと、職場を何回も変わる人がたくさんいるのも驚きです。どこに行ってもやることは一緒なのだから、ずっと同じ職場にいた方が楽だと思うからです。あと、これは職場に対してではないのですが、入所者さんの家族の面会が少なすぎます。一度も家族が来ていない入所者さんもいますし、荷物の受け渡しや事務手続きのためだけに来る家族もいます。昔の日本には『姥捨て山』という文化があると聞きましたが、家族なのですから、もっと寄り添ってあげて欲しいです」

C子さん「何でも時間通りにするのが不自然に感じます。お風呂が好きな人も嫌いな人もいるのに入る時間が同じとか、楽しんでいる人も退屈している人も同じ時間レクレーションに参加させられるとか、お腹のすき具合は人によって違うのに食事の時間が決まっているとか、刑務所みたいだなと思うことがあります。あと介護士の数が圧倒的に不足しています。だから仕事が大変になるし、大変だからなる人がいない…この悪循環はすぐに改善すべきです」

日本の介護業界の方々、こうした声をどう思われるだろうか。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。