【スーパーGT】ここまで6戦4勝……猛威振るうトヨタ・GRスープラと対照的に、苦戦気味のホンダ・シビック タイプR。今季の最低地上高変更も一因か

 今季のスーパーGTはここまで6戦が終了し、残りは2戦。タイトル争いも大詰めとなってきた。その中で目立っているのが、トヨタ陣営のGRスープラの活躍だ。

 昨年は36号車au TOM'S GR Supraの坪井翔、宮田莉朋組がシリーズチャンピオンを獲得したトヨタ陣営。坪井、山下健太組となった36号車は今季も現時点でポイントリーダーにつけており、昨年は大苦戦した37号車Deloitte TOM'S GR Supraも2勝を挙げる躍進で僅差のランキング2番手。その他にも、38号車KeePer CERUMO GR Supraが同5番手、39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraが先日のオートポリス戦で優勝して同7番手と、陣営全体が平均的に高いパフォーマンスを示しているのが今季の特徴だ。

 そういった傾向は、各陣営1台あたりの獲得ポイントを比較しても分かりやすい。全6台のトヨタ陣営は、昨年は平均40.5ポイントで日産勢の46.5ポイントに及ばなかったが、今季は6戦終了時点でトヨタ37点、日産31.75点、ホンダ26.2点となっている。(※日産勢は全5台、ホンダ勢は全4台)

 今季からシビック・タイプR-GTを投入したホンダ陣営は、タイトル争いに絡んでいる100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTを除いてランキング下位に沈んでしまっているのが現状。それには、ポテンシャルを見せながらもトラブルやアクシデント、アンラッキーなどでポイントを落としている車両が多いから……という側面もあるのだが、純粋なパフォーマンスという面でもライバル勢、特にトヨタに対して後れを取っているという声もある。

 現に100号車の星学文エンジニアも第7戦オートポリスのレース前、今季上位入賞を繰り返していることについて「他がペナルティなどで落ちてくれている中で、なんとか生き延びているだけなのかなと思います。決勝ペースはそんなに良くはない。決勝は落としていないだけかと」とコメント。ここまでのリザルトが、車両としてのパッケージの良さを必ずしも反映したものでないことを仄めかしていた。

「今シーズン見ているとやっぱりちょっと……。個人的な意見で言うと、トヨタさんに水を開けられているなと思います」

 そう語るのは、8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTの一瀬俊浩エンジニア。スーパーフォーミュラでは野尻智紀と2度のチャンピオンに輝いた実績を持ち、今年のスーパーGTでは若手の辻凱杜エンジニアを支えるパフォーマンスエンジニアを務めているが、シビックから速さを引き出すことに苦労しているようだ。

 一瀬エンジニアがその一因として指摘したのが、ホンダ陣営のベース車両変更が行なわれたタイミングで、GT500車両の最低地上高引き上げが重なったことだ。

 GT500では今季から安全対策の一環として、ダウンフォースを減らしてコーナリングスピードを抑制すべく最低地上高が5mm引き上げられた。GT500の各メーカー・チームはダウンフォース減の影響を最小限に抑えるべく頭を悩ませているが、一瀬エンジニアはトヨタ陣営がそこにうまく対処したのだろうとした一方で、ホンダ陣営は同じタイミングで車両がNSXからシビックに変わってしまったため、検証がしづらい状況にあることが事態を難しくしていると語った。

「今年は車高が上がることでダウンフォースが減って結構難しくなる、という状況でしたが、そこをうまく処理してきているのがトヨタさんだと思います」

「僕らは(不調の)原因を掴みにくい状況と言いますか……クルマ(車両変更)の影響なのか、車高の影響なのか、僕らの中でも判断しかねる部分があります。そういう状況なので、マシン開発でもどちらの方向に行けばいいか、少し迷いもあったのかなと思ったりします」

 また一瀬エンジニアは、雨の中行なわれた第6戦SUGOの練習走行で、スープラ勢が上位を占めた一方でシビック勢が3〜4秒の大差をつけられて軒並み下位に沈んだことも、今季の序列を表している……という話がホンダ陣営のエンジニア間でも話題になっていると明かした。

「僕らは絶対にそんな(トヨタ勢のような)タイムが出ないという感覚で。僕らとしては、シビックでのウエットの経験がない中で、ベストではないにしても、そんなに悪くない感覚だったのですが、タイムを見て驚きました」

 先日のオートポリス戦も、ペナルティを受けただけでなく、純粋なマシンパフォーマンスも振るわなかった8号車ARTA。これは限界を押し上げるために、チャレンジングなセットアップをした結果だと一瀬エンジニアは語る。

「こういった状況なので、今回は今持っているマシンパッケージの中でこぢんまりまとめるのではなく、限界点をもっと上げるためにチャレンジングなセットアップを持ってきました」

「今までの枠を飛び越えて、もっとタイムを見つけたかったんです。でも、なかなかテストなしには、合わないですね」