大波乱の箱根駅伝予選会…果敢な挑戦でファンをざわつかせた中大は6位で本戦へ。なぜエース格の吉居、溜池、柴田が不在でも強いのか

 東海大が落選するなど波乱の大会となった第101回箱根駅伝予選会。そのなかでエース格3人の出走がなかった中大がキッチリと6位通過を果たした。

 藤原正和駅伝監督は、「選手たちには『今日は順位より、粘り通して、10番までに入ればOKだ』ということ言っていましたので、まずは安堵しています」と微笑んだ。

 今大会、中大はエントリーの段階から駅伝ファンをざわつかせていた。5000mで日本人学生歴代9位の13分22秒01を持つ吉居駿恭(3年)、7月に10000mで27分52秒38をマークしている溜池一太(3年)、ハーフマラソンでチーム最速の1時間01分41秒を持つ柴田大地(2年)を選手登録していなかったからだ。その一方で1年生を5人もエントリー。藤原監督いわく「チャレンジングなレース」を敢行した。
  今大会は気温が25度近くまで上がり、熱中症や脱水症状に苦しむ選手が多発。主将・佐野拓実(4年)は「全員63分未満で走りたい」と意気込んでいたが、藤原監督は気象条件に合わせてレース戦略を柔軟に変えてきた。

「暑かったので、タイムは全く指示していないです。とにかく順位だ、と。白川と岡田は30番以内、真ん中のグループ5人はできたら50番以内。最終ラインは100番前後でと考えていました」

 関東インカレ1部ハーフマラソン3位の白川陽大(3年)は17位、同5000m6位の岡田開成(1年)は24位と予定通りの順位でフィニッシュ。そして阿部陽樹(4年)、原田望睦(1年)、佐藤大介(1年)が36位、40位、47位と続いた。2番目のグループで取りこぼしはあったが、ルーキー5人を起用しながら、大きく崩れることなくレースを終えた。

「1年生は学内10位以内に4人が入ってくれた。なかでも岡田は自ら引っ張る場面があったんですけど、後半も粘ったので、よくやったと褒めてあげたいですね。あとは阿部の復調が印象的で、箱根に向けて視界は良好かなと思います」
  予選会にエントリーされなかったエース格の3人は、吉居こそ全日本大学駅伝に絞って調整する方針だったが、溜池と柴田は故障があったため登録を見送ったという。

「溜池は仙骨を痛めて、1カ月ぐらい走れていなかった状態からようやくジョグを始めた状況です。柴田はずっとジョグはできているので、全日本には間に合わせたいなと思っています」

 藤原監督も就任1年目に悪夢を経験しているが、予選会は何が起こるかわからない。それでもエース格ふたりの出場が難しい状況になっても、吉居をエントリーしなかったことに藤原監督の“矜持”を感じる。

「第100回大会で区間賞を獲得している選手に予選会を走らせるのはちょっと違うんじゃないのか? という話を新チームが始まったときにしました。全員で駿恭を箱根に連れていく気概でやっていこうと言っていたので、起用する気持ちはありませんでした」
  吉居だけでなく、日本インカレ3000m障害で2位に入った浦田優斗(4年)も予選会にエントリーしなかった。さらに今季5000m(13分44秒96)と10000m(28分33秒76)で自己ベストを更新している本間颯(2年)の起用も見送っている。これは予選会の2週間後に行われる全日本大学駅伝(11月3日)を見据えての戦略だった。

「浦田はハーフ向きの選手ではないので、全日本に合わせています。本間はどちらかという駿恭と一緒に全日本に向けて作ってきた感じです。全日本は今日のダメージ次第ですけど、予選会を走っていない浦田、本間、駿恭を軸に面白いレースができるんじゃないかなと思っています。箱根に向けては、溜池と柴田にも奮起してもらって、『総合3位以内』という目標を達成できるように、往路からしっかりと攻めた布陣を組んでいきたいです」

 予選会6位通過の中大だが、まだまだ“本当の実力”は見せていない。全日本と箱根の継走に注目したい。

取材・文●酒井政人

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