ゲームを遊んでいると、時にトラウマレベルの作品に出会うことも少なからずあります。そんな衝撃的な展開を辿(たど)った作品のなかから、厳選した3タイトルをお届け。いずれも、記憶に残るものばかりです。



帰宅すると、母親の様子がおかしい。実は、すでに母親は……。画像はスーパーファミコン Nintendo Switch Online版『真・女神転生』 (C)1994 ATLUS

【画像】「お母さんを返して!」 こちらが心をえぐられるゲームの「トラウマ場面」です (6枚)

最も残酷な形で日常を破る『真・女神転生』

 コンピュータゲームが持つ特徴のひとつとして、インタラクティブ性の高さがあります。プレイヤーとゲームが密接に関係するため、体験の手応えも増すうえに、感情移入もしやすくなります。

 しかし気持ちが入りやすいため、衝撃的な展開に心が揺さぶられやすくなり、その体験が忘れがたい思い出として刻まれるケースも少なくありません。そうしたゲームは、ドット全盛期から3Dアクションまで、時代を問わず存在します。

 いまも語り継がれる作品のなかには、プレイヤーにどんな衝撃を与えたのか。特に忘れがたい3本を振り返ります。

※以下、『真・女神転生』『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』『The Last of Us』のネタバレを含みます。

『真・女神転生』

 1992年10月に発売された『真・女神転生』は、長く続くシリーズ展開につながるほどの人気を博し、「ペルソナ」シリーズをはじめ数多くの派生作も生み出しました。その偉大な功績の原点に相応しく、当時多くのユーザーが本作に魅了され、プレイに没頭しました。

 ユーザーを一気に引き込んだのは、序盤の忘れがたい展開も大きな理由のひとつです。ゲーム開始当初、主人公はごく普通の少年として、母や愛犬の「パスカル」とともに日常を過ごしていました。

 母親は小言を口にするものの、主人公の身を案じることも多く、親としてしっかり愛情を注いでいることが伝わってきます。それを主人公も自覚しているのか、頼まれた買い物をしっかりこなすなど、良好な関係性がうかがえます。

 しかし彼らの穏やかな日常は、あっけなく引き裂かれてしまいました。近所で殺人事件が起こり、街に不穏な空気が広がり始めた頃、帰宅した主人公に異変が訪れます。

 帰ってきた主人公を出迎える母親は、どこか様子がおかしく、強い口調で主人公を呼び寄せようとします。その態度に警戒すると、「チッ……カンがいいな」と毒づきはじめ、母親になりすました悪魔だと主人公に告げます。

 目の前の母親が悪魔なら、本物の母親はどこにいったのか。その謎は、悪魔の発言で解き明かされます。「すぐにあわせてやるよ おれのはらのなかでな!」と。しかも、母親そっくりの顔で、そのセリフを口にしたのです。

 愛情豊かな母親の結末に悲しむ暇もなく、悪魔との戦いが始まり、勝利を得るも心に空いた穴は埋まりません。しかし現実は容赦なく、彼は過酷な日々に飲み込まれていくのです。……苦しさを伴うこの旅立ちに、当時多くのプレイヤーが衝撃を受けました。



抗えぬ過酷な運命へと突き進むシグルドたち。画像はスーパーファミコン Nintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』 (C)1996 Nintendo/INTELLIGENT SYSTEMS

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少女を救うために手を染めた男

『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』

 同じくスーパーファミコンのゲームでは、『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』の展開も忘れられません。本作は二部構成で、前半は親世代が、後半は子供世代が戦いに身を投じます。

 前半の主人公を務めるのは、公子の「シグルド」。公国を背負う彼は、自国や近隣諸国を守るため、仲間とともに自ら戦いに臨みます。厳しい戦いを繰り返すも、その最中に出会った「ディアドラ」と関係を深め、後に妻として迎えます。また、シグルドだけでなく、多くの仲間たちも(プレイに応じて)代えがたき相手と出会い、恋に落ちていきます。

 シグルドとディアドラの間に息子となる「セリス」が生まれるなど、喜ばしい出来事もあった一方、戦いは激化するばかり。その日々のなかで、親友「エルトシャン」の死、ディアドラの行方不明、いわれのない嫌疑をかけられるといった、いくつもの凶事に襲われます。

 失意と激戦に心身を消耗しつつも、ヴェルトマー公「アルヴィス」がシグルドの嫌疑を晴らすとし、彼とその仲間たちを王都へ招きます。しかし、一行を迎えたアルヴィスは、シグルドたちに反逆者の烙印を押し、攻撃を仕掛けてきました。用意周到な包囲網になすすべもなく、シグルドたちはその命を落とします。愛すべき妻と子供たちを残して……。

 二部構成で世代が交代するゲーム自体はいくつかあるものの、父親世代が奸計によりほぼ全滅。残された妻たちは子供を育て、その子供たちが反乱軍として立ち上がる、という流れは、あまりに重く罪深い展開です。プレイヤーにとっても、手塩にかけて育てたシグルドたちが殺されていく様は、我が子を奪われるような痛みに他なりません。

 しかも、行方不明になったディアドラは、アルヴィスに奪われ妻にさせられてしまいます。このふたりの間に生まれた「ユリウス」が、第二部でセリスと戦うという展開も、事態の重さに拍車をかけました。

『The Last of Us』

 本作の舞台は現代で、主人公「ジョエル」の視点を通じて物語が描かれます。突如発生したパンデミックにより街中が混乱するなか、愛娘の「サラ」とともに避難するものの、銃弾によってサラは命を落としてしまいました。

 それから20年後。文明は大きく後退し、生き残った人びとは寄り添うように厳しい日々を送っています。感染による被害は後を絶たず、未だ治療法が見つかりません。あの惨劇を生き延びたジョエルも、過酷な毎日をやり過ごすように生きていました。

 そんな彼のもとに、まだ幼さが残る少女「エリー」を護衛し、「ファイアフライ」と呼ばれる組織の元まで連れていって欲しいという依頼が舞い込みます。気乗りはしないものの、成り行きから仕事を引き受けたジョエルは、年が離れて会話も噛み合わないエリーとの旅を始めます。

 当初はぶつかることも多かったふたりですが、次第に距離が縮まり、ぎこちなくも信頼できる関係を紡いでいきます。またジョエルは、かつてサラを救えなかった後悔も手伝い、エリーを守る意志を強めていきます。

 エリーをファイアフライに届ける理由は、彼女が感染に対する免疫を持つため。エリーの身体を調べることで、いま生き残っている人類が救われる感染対策が見つかるのでは、と期待されているためです。

 その事実を知りながらも、ファイアフライが待つ病院にたどり着いたジョエルとエリー。そこで待つ検査は、エリーの命を奪う行為でもあります。エリー自身はその事態を受け入れていましたが、ジョエルにとってはとうてい承服できないものでした。例え、彼女の命と引き換えに全人類が救われるとしても。

「ひとりの犠牲で全員が救われるなら仕方がない」、「誰かのために犠牲になるなんて間違っている」、そのどちらも決して間違いではありません。人類のためにエリーに命を失わせるファイアフライも「善」ではなく、人類の救済になるとしてもエリーを諦められないジョエルも「悪」ではないでしょう。

 しかし問題は、ジョエルが武力行使に出たことです。銃器やナイフを手に、ファイアフライに属する人びとを何十人と殺し、手術室に乗り込んで医師も殺害します。この強硬手段がなければエリーを助けられなかったとはいえ、一度は手渡した彼女を取り戻すため、あまりに多くの被害者を出してしまいました。少なくとも、遺族がジョエルの行為を「悪」だと考えても無理はありません。

 なお、ジョエルが起こした行為の因果は、続編の『The Last of Us Part II』で、彼の身に跳ね返ってきました。これを因果応報と呼ぶべきか、悲劇の連鎖をとらえるか……その受け取り方は、プレイヤーそれぞれに委ねられています。