脚に「味覚センサー」が作る遺伝子を特定

チームがホウボウの遺伝子解析を行ったところ、「Tbx3a」という遺伝子が脚先の味覚センサーを形成するのに関わっていることは特定されました。

Tbx3aはホウボウだけでなく、ヒトを含む脊椎動物にも広く存在しており、四肢動物の手足の一部を作るのに関与していることが知られています。

続く実験で、野生のホウボウから遺伝子編集技術を用いてTbx3aを取り除いた結果、6本の脚が形成不全を起こすことを明らかにしました。

遺伝子編集されたホウボウは味覚センサーを失って、砂中の獲物を探し当てる能力を失ったことから、Tbx3a遺伝子はホウボウの脚と乳頭突起の両方の形成に関わっていると見られます。


ホウボウから「Tbx3a」を除去すると脚の形成不全が起きた / Credit: Amy L. Herbert et al., Current Biology(2024)

Tbx3a遺伝子は非常に古くから生物の中に存在する遺伝子です。

驚くべきことに、ホウボウは私たちの手足の形成に関与するのと同じ遺伝子を使って、ヒレとは別に6本の脚を発達させ、さらに、それらの脚先に味覚機能までも装備してしまったのです。

これは広大な自然界の中でも異例の存在と言えるでしょう。

チームは今後、ホウボウがこれらの機能を進化させた遺伝的プロセスを詳細に明らかにしたいと話しています。

参考文献

Research suggests the scuttling sea robin may serve as evolutionary model for trait development, including in humans
https://news.harvard.edu/gazette/story/2024/09/an-idea-with-legs/

This Fish’s ‘Legs’ Evolved a Special Sense to Find Food Hidden in The Sand
https://www.sciencealert.com/this-fishs-legs-evolved-a-special-sense-to-find-food-hidden-in-the-sand

元論文

Evolution of novel sensory organs in fish with legs
https://doi.org/10.1016/j.cub.2024.08.014

Ancient developmental genes underlie evolutionary novelties in walking fish
https://doi.org/10.1016/j.cub.2024.08.042

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部