ドイツ・フランクフルトで3日間にわたって開催された男子テニスのエキジビションマッチ「アルティメット・テニス・ショーダウン」(10月18日~20日/ハードコート)に出場した世界ランク16位のウーゴ・アンベール(フランス)が、海外メディア『Tennis Majors』のインタビューに回答。その中で四大大会に次ぐマスターズの日程拡張と過酷なツアースケジュールを痛烈に批判した。
あまりにもタイトなツアースケジュールにはカルロス・アルカラス(スペイン/現2位)やジャック・ドレイパー(イギリス/同18位)ら若手のトップ選手からも多くの批判が上がっている中、とりわけアンベールは大多数のマスターズが従来の1週間から2週間に拡張されたことに嫌悪感を抱いている様子だ。
「運営団体は決して選手たちの味方をしない。こう言ってしまうのは申し訳ないが、マスターズを2週間に延長したことがすでに(テニス界の)最大の問題だと思う。疲れるよ。彼らは、我々(選手)はより多くの収入が得られるなどと言うが、それは真実ではない。
(遠征費等で)その2倍もの出費があるし、ケガをする選手もずっと多い。もうテレビで観戦することさえ、価値がなくなっていると思うし、いつ誰がプレーしているかなどもわからなくなっている。確かに全てお金の問題だが、それだけじゃないんだ」
「(今年の)北米ハードシリーズでは、体調が優れない時期があった。遠征に加え、ずっと家を離れていたことで疲れ果てていたし、(心身ともに)つらすぎる。それなのに今、運営団体はまた同じ方向に向かっている。来年からはカナダとシンシナティのマスターズも2週間の日程で開催されるしね」
さらにアンベールは大会数が多すぎるあまり、なかなか十分な休養を取れない現状をこう嘆く。
「まったくナンセンスだと思う。シーズンが長すぎる。1カ月しか休めないスポーツなんて他にはない。今年はモゼール・オープン(フランス・メス/ハード/ATP250)を最後にシーズンが終わるけど、1カ月後の12月27日にはユナイテッドカップ(オーストラリアの複数都市/男女国別対抗戦)に出場する。家でクリスマスを祝うことすらできないわけだ」
以前世界1位のヤニック・シナー(イタリア)は「我々選手は、どこでプレーするか、またはしないかを選べる」として、過酷なスケジュールも自分でコントロールできると主張していたが、これに対してアンベールは、ランキングの低い選手にとってはそう単純な話ではないと反論。次のように自身の考えを述べた。
「シナーのように、プレーしないという選択もできると言う人もいると聞く。でも世界50位や60位にいる時は、ランキングを上げるためにできるだけプレーしようとするものだ。現状を見直す必要があり、もう少しスケジュールを凝縮する必要もある。今のままでは疲れるし、しばらくすると(プレーを続けるのが)不可能になってしまう」
商業的利益が“重要視されすぎている”現状は、ファンからしても看過できないもの。運営団体はもう少し選手の健康に配慮すべきではないだろうか。
文●中村光佑
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