林家菊丸“芸歴30年”記念独演会で叶えた「最初で最後の夢」とは!? 春風亭昇太をゲストに大盛況

今年で芸歴30年を迎えた落語家・林家菊丸の記念公演「文化庁芸術祭大賞受賞&芸歴三十周年記念 三代目林家菊丸独演会」が、9月23日(月・振替休日)に大阪・なんばグランド花月で開催されました。この日はゲストに春風亭昇太を迎え、菊丸は『井戸の茶碗』、『看板のピン』、そして新ネタ『大丸屋騒動』を披露しました。


出典: FANY マガジン

春風亭昇太は“ストレス”をめぐる新作落語

独演会は前座をつけず、菊丸の『看板のピン』から始まります。菊丸が登場すると「待ってました!」の声が飛び、一気に華やかに。菊丸は高座で「なんとか噺家30周年を迎えることができました」と安堵の表情を浮かべる一方で、「まだまだ通過点です」と気を引き締めます。

三重県で生まれ育った菊丸は、上方落語をやるにあたって生粋の関西弁との違いに戸惑ったとか。そして、「続けて来られたのは師弟関係があったからこそ。かっこいい人に憧れます」と本題へ。

男も惚れる渋い賭場のアニキを、ドスを効かせた声で怪演。前半は博打の世界を緊張感たっぷりに、後半はアニキのマネをする若者の言動をおもしろおかしく語り、鉄火場に漂う緊迫感をほどいていきました。


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続いて、ゲストの春風亭昇太が颯爽と高座へ。昇太へのかけ声が飛ぶと、「野球の応援みたいな声援をありがとうございます」と愛嬌たっぷりの笑顔を見せます。昇太はレギュラー出演中の人気番組『笑点』(日本テレビ系)のことや、東海大学に復学してこの秋から学生になることなど、話題に事欠きません。

「好きなこと、新しいことをするのはいいですね」と楽しそうに話していた昇太は、「うまくいけばいいけど、小さいストレスもあるので……」と新作落語『ストレスの海』へ。軽妙な語り口で、観客を惹きつけました。


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「ネタおろし」と「十八番」

続く菊丸の出番では、舞台の照明が青や紫に変化して、おどろおどろしい雰囲気に……。ここから菊丸が新ネタ『大丸屋騒動』を披露します。妖刀「村正」にとりつかれた男が京都の祇園で騒動を起こす噺です。花街の場面では、女性の演じ方に定評のある菊丸の本領発揮。すっと男女を入れ替えるさまは、早変わりを見ているようです。

一方で、男が「村正」を手にふらふらとさまよう場面では狂気に満ちた表情を浮かべます。終始、ゾクゾクとする演出で語る菊丸ですが、オチでは憑き物が落ちたようにすっきり。緊張と緩和の妙味で聞かせました。


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中入り後はトリネタの『井戸の茶碗』をたっぷりと。菊丸はこの侍ネタが評価されて、「文化庁芸術祭大賞」を受賞しました。この十八番ネタについて、「いまの時代の人でも違和感がない、そういうところを常に意識している」と語る菊丸ならではの工夫が随所に散りばめられています。正直者たちの揺るぎない正義がかえって笑いを生みつつ、最後は三方良しの大団円。心温まる時間を演出しました。


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