ネタ作り、ライブ、テレビ、YouTube……さまざまなシーンで、芸人たちを陰で支えている“作家”と呼ばれる職業の人たちがいます。第一線で活躍する芸人たちは、どのように作家と仕事をしているのでしょうか。芸人×作家のスペシャル対談シリーズ『芸人と、作家と』。今回は、芸歴30年を超え、ともに50歳を迎えた2丁拳銃(小堀裕之、川谷修士)と、若き作家・南野(なんの)凌一朗が登場。20歳の年の差を感じさせない関係性について語ってもらいました。
出典: FANY マガジン
修士と昼に会って小堀とは夜呑む!?
──南野さんが2丁拳銃と組んでどれくらいですか?
南野 2018年からですから、6年くらい経ちます。
修士 もうそんなにたったか。
──どんなきっかけで2丁拳銃と仕事をするようになったんですか?
南野 僕がルミネ(theよしもと)で進行の仕事をしていたころ、小堀さんに誘ってもらって。
──小堀さんは、なぜ南野さんを誘ったんでしょう?
小堀 しゃべりやすかったから。
全員 (笑)
小堀 ルミネの出番のとき、ずっとしゃべってたんですよ。で、ちょっとしたことを頼みやすかった。これ、ものすごい大事なことやと思うんです。
南野 で、作家として活動し始めたんですけど、最初は2丁拳銃の「拳」の字が書けなくて。映像データを渡すときに「2丁“挙”銃」と書いてしまってました。
──南野さんが作家になって最初の仕事は「拳」を書けるようになることだったんですね(笑)。芸人さんによって作家とのかかわり方は違いますが、2丁拳銃と南野さんはどんな関係ですか?
修士 僕らは、どちらか片方がネタを書く、俗に言う“ワンマンスタイル”ではないんですよ。でも、お互いにネタを書くというのとも、またちょっと違って……という。
南野 めっちゃ特殊ですよね。僕は小堀さんと2人で会って、修士さんとも2人で会って、それぞれと話をしていく、という感じです。
出典: FANY マガジン
──たとえば2丁拳銃のライフワークである100分漫才ライブ『百式』の前は、いったん2人が考えた設定やくだりをそれぞれ別々に南野さんに話して、それが集約されていくんですか?
修士 そうですね。チーム作業というか。
小堀 今年も11月に『百式』をやりますけど、いままさにその段階です。まだ2人で合わせる前の、それぞれが相談している時期。
──では、現時点ですべてを知っているのは南野さんだけ。
南野 そうですね。「あっちはいま、こんな感じです」と随時、伝えてはいますけど。で、ある程度そろったら、どのネタをどんな順番でやるかなどを相談していきます。
──いつもの寄席のネタも同じ作り方ですか?
修士 寄席のネタは『百式』で一度やったものから抽出することが多いので、直接コンビ間で話しますね。ただ、南野に会ったときに「これどう思う?」と相談したりはします。僕の中で、いろんな意見を聞きたいんですよ。小堀の意見もそうやし、南野の意見も知りたい。
──そうやって細かな調整を重ねるんですね。
修士 そう。だから、小堀とオレはお互いに脚本家であり演出家で、南野は同じく脚本家であり、舞台監督でもあり。あくまでも総合演出は2丁拳銃ですけどね。
──お話を聞いていると、南野さんは編集者のようにも感じます。
修士 たしかに、僕らが漫画家やとしたら、南野が担当編集であり、ある意味で編集長的な存在かもしれません。
──小堀さんは南野さんと組んで、どうですか?
小堀 思いっきり甘えてますね。変な時間に呼び出そうとして、最近めっちゃ断られてます。夜に「飲みながらネタの相談しようや」とか誘っちゃったりするんですけど。
修士 飲むだけで終わっちゃって、結局できないんやろ?
南野 そう。だから、僕も「今日は飲むだけになっちゃってもいいか」と思う日は、誘いに乗ります(笑)。
修士 僕は昼集まるタイプやし、予定時間通り終わるからな。
南野 そうなんです。でも小堀さんとは、一度会ったら何時に終わるかわからないんですよ。
小堀 僕は、そういう甘え方をしてしまってます。
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20歳下でも好き勝手言える関係
──南野さんから見て、この6年間での2丁拳銃の2人の変化はありますか?
南野 『THE SECOND~漫才トーナメント~』が始まってから、寄席でのネタの変更や調整がぐっと増えた気がします。ちょっとしたところを変えてみたり、ネタ自体もいろんなものを試してみたり。「今日このネタやるんや」と驚くこともよくあります。
修士 そういうモードなんかもしれんな。
小堀 今年はちょっと『THE SECOND』を意識しすぎて、変なゾーンに入ってうまくいかなかったですけども、やっぱり『百式』で『THE SECOND』につながるようなものも見つけられたらと思ってますし、それをふだんの寄席で試したりすることもありますしね。
修士 今年の『THE SECOND』を観てて、やっぱり寄席のときのパワーが大事やなと思ったんですよ。だから1回1回の寄席出番でしっかりいい状態を作りたいなと思ってます。
出典: FANY マガジン
──南野さんから見た2丁拳銃の魅力はどこですか?
南野 何でも言わしてくれはることですね。思っていても言えない人っているんですよ。ましてや、おふたりからしたら僕なんてめっちゃ年下だから、本来ならなかなか言えない。でも、おふたりとも「こっちのほうがいいんじゃないですか」とかいうことを言いやすい雰囲気を出してくれるし、僕の提案をめっちゃ聞いてくれる。だからかなり好き勝手言ってます(笑)。
小堀 南野の注意が、めっちゃ上手になってます。先日も、僕が息子と組んでるコンビ“ヘドロ一家”の新ネタをおろしたんですよ。そしたら、すぐに「あれはこうしたほうが」と言ってくれた。しかも、それが「なるほど」と納得できることで。1回観ただけやのにそこ指摘してくるんや、成長したなあと思いました。僕が書いてる新喜劇の脚本について相談したときも、「こっちのほうがいいんじゃないですか」と上手に言うてたで。
南野 内容じゃなくて言い方ですか(笑)。
小堀 いや、言い方もめちゃくちゃ大事。もちろんなんでも言ってほしいし、そういう空気も出してるつもりなんですよ。でも、勝手なんですけど「その言い方なんやねん」と思ってしまうこともある。だから、うまいこと機嫌もとってほしいんですよ(笑)。最初からそこがうまかった。だから全力で甘えられるんですよね。南野は長男やからか、オレのこと弟やと思ってるとこありますよ。
南野 いやいや。小堀さん、僕にいつも「兄弟やな」と言ってくるんです。
修士 お前、息子にも「兄弟やと思ってる」とか言うけど、違うで?
小堀 南野とオレ、20歳違うんやろ。兄弟、しかも兄貴や言うてたけど、年の差考えたら息子やな。