数多くあるロボットアニメのなかには、現実的でシビアな展開が繰り広げられる作品もあります。そういった作品では、目を覆いたくなるほどの惨劇が描かれることもありました。



ナミ(左)はオレンジ髪のポニーテールが似合う明るい少女。画像は「フルメタル・パニック! Invisible Victory(IV) BOX」購入特典(KADOKAWA) (C)賀東招二・四季童子/KADOKAWA/FMP!4

【画像】え…っ?「へそ出しドキドキする」 こちらが正面から見ると余計カワイイ『フルメタル・パニック!』のナミです

衝撃の結末に原作者も「お通夜気分」

 数多く存在する「ロボットアニメ」のなかには、勇ましいヒーローによる勧善懲悪の物語もあれば、現実的でシビアな物語が展開される作品もあります。特に後者に当たる作品では、目を覆いたくなるほどの惨劇が待ち受けていることもありました。

『フルメタル・パニック! Invisible Victory』

 ロボットアニメの凄惨な展開として、2018年に放送された『フルメタル・パニック! Invisible Victory』に登場した「ナミ(CV:茅原実里)」を思い出す人もいるでしょう。同作は賀東招二先生の同題ライトノベルを原作としたアニメ「フルメタル・パニック!」シリーズの(『フルメタル・パニック? ふもっふ』を含め)4作目にあたります。

 主人公の「相良宗介(CV:関智一)」は秘密組織「ミスリル」の一員として、テロ組織「アマルガム」に狙われるヒロイン「千鳥かなめ(CV:ゆきのさつき)」を護衛するため、学園に潜入して奮闘します。ところが、ついに本格的な行動を開始したアマルガムによってミスリルは壊滅し、宗介の奮戦も空しく千鳥はアマルガムの手に落ちてしまいました。

 組織の後ろ盾もなくなった宗介は、人型兵器「アーム・スレイブ」を使った試合が開かれている東南アジアの町「ナムサク」を訪れます。その真の目的は、競技に裏で関与するアマルガムです。宗介はナミの率いる弱小チーム「クロスボウ」に加入し、次々とチームを勝利に導きました。

 第8話「ワン・マン・フォース」は、アマルガムのメンバー「クラマ(CV:山路和弘)」が、ナミを人質にとりつつ、宗介に姿を現すよう要求する緊迫したシーンから始まります。10秒以内に(姿を現せ)とクラマは言っていたのですが、その猶予を待たずしてナミは射殺されてしまいました。倒れ伏したナミの瞳孔が開き、血だまりが広がっていく様子に多くの視聴者が衝撃を受けたことでしょう。また、同話はナミとの別れを強調するように、彼女を演じた茅原さんのバラード曲が特殊エンディングとして流れました。

 原作小説でも同様の結末を迎えており、これについては賀東先生自身も大いに悩んだ結果だったそうです。アニメ放送時には、2006年に発売された原作の執筆時をあらためて振り返り、Twitter(現:X)にて「今夜はお通夜気分…なぜ殺した、十ン年前の俺…」(原文ママ。2018年6月8日付)とツイートするほどでした。



主人公のアンジュ、兄貴がヤバい。「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Blu-ray BOX」(キングレコード)

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生徒や子供も容赦なく虐殺

『革命機ヴァルヴレイヴ』

 2013年に放送された『革命機ヴァルヴレイヴ』も、ダイソン球(スペースコロニーの1種)が宇宙に浮かぶ世界を舞台に、戦いとそれにともなう惨劇が描かれた作品です。

 作中に登場する人型兵器「ヴァルヴレイヴ」シリーズには、搭乗者が不死身に匹敵するほどの高い再生能力を持つ「マギウス」なるものに変容するという副作用があります。端的に言えば、吸血鬼のような超常の力を持つ、人ならざるものです。作品の終盤、そのマギウスの不死が敵国の「ドルシア軍」によって暴露され、悲劇が巻き起こるのでした。

 それまでにも、主人公サイドを「世界の悪」に仕立て上げる陰謀が進行しており、やがてドルシア軍は、敵対していたはずの大国「環大西洋合衆国(ARUS)」と手を組み、そこから事態が急変しました。

 主人公たちの拠点であるダイソン球「モジュール77」に滞在していた「ARUS軍」の兵士たちによって、主人公サイドである「新生ジオール」に所属する「咲森学園」の生徒たちが、ヴァルヴレイヴのパイロットか否かを問わず危険生物とみなされ、次々と殺されていきます。血しぶきが舞うなか、抱き合って命乞いをするも無残にも殺されてしまうふたりの女子生徒や、無重力で漂う多くの死体といった、画面上の描写はなかなかに直接的なものです。

 突然始まった惨劇に対して、当時ネット上では「無慈悲な虐殺が行われるとは思わなかった」「ここまで視聴者置いてきぼりのアニメもすごい」などさまざまな声があがり、視聴者のあいだで賛否がわかれました。

『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(ロンド)』

 2014年に放送された『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(ロンド)』は、多くの人類が超能力の「マナ」を扱える「マナ至上主義」となった世界が舞台です。

 まれに生まれる、マナを使えない女性「ノーマ」は隔離されることになっており、そうして囚われたノーマたちが送られる軍事施設「アルゼナル」は、人型兵器「パラメイル」を使い、別の世界から襲ってくる敵「ドラゴン」と戦うための拠点でした。

 王族の一員として過ごしていた主人公の「アンジュ(CV:水樹奈々)」もノーマだったことが判明し、自らの地位を失うとともにアルゼナルへ送られ、「ヴィルキス」と名付けられたパラメイルで戦いに身を投じていきます。

 序盤のアンジュは、もとが王族のためプライドが高く、戸惑いから身勝手な行動を起こすこともあり、仲間との衝突を繰り返していました。しかし、次第に仲間たちと打ち解けていき、いつしかアンジュもアルゼナルという場所が好きになっていきます。

 やがて、ヴィルキスを狙うアンジュの兄「ジュリオ・飛鳥・ミスルギ(CV:鳥海浩輔)」は、自ら軍を率いてアルゼナルに侵攻、女性も子供も関係なく住民を皆殺しにしていきました。アンジュの仲間「エルシャ(CV:小清水亜美)」が大切にする幼いノーマたちも犠牲となり、悲惨な光景を目のあたりにした彼女は、膝から崩れ落ちて涙するしかできません。

 それほど流血は多くありませんが、視聴者からは「虐殺が思ったよりも絵的にツラい」「子供が虐殺される鬱展開で笑えない」といった声があがっていました。