元全米王者ティーム、最後の大会は初戦で敗れ現役生活に幕「全ての旅路は夢のようなものだった」<SMASH>

 男子テニスツアーのATP500シリーズ「エルステ・バンク・オープン」(10月21日~27日/オーストリア・ウィーン/室内ハードコート)が現地21日に開幕し、初日のシングルス1回戦に今大会限りで引退する元世界ランク3位のドミニク・ティーム(オーストリア/現318位)が登場。ルチアーノ・ダルデリ(イタリア/同42位)と対戦したが、6-7(6)、2-6で敗れ、現役ラストマッチを終えた。

 2021年6月の「マヨルカ選手権」(スペイン・マヨルカ/芝/ATP250)で右手首を負傷した31歳のティームは、同箇所のケガが改善しないことを理由に今季限りでの現役引退を表明。19年に優勝を経験した母国開催のエルステバンクOPをキャリア最後の舞台に選んだ。

 今大会には本戦ワイルドカード(主催者推薦)で参戦。初戦では今年2月の「コルドバ・オープン」(アルゼンチン・コルドバ/クレー/ATP250)でツアー初優勝を飾った22歳の新鋭、ダルデリと顔を合わせた。母国ファンに大歓声で迎えられたティームは序盤から代名詞である片手バックハンドのダウンザラインを2本決めるなど見せ場を作り、相手のキレのあるストロークにも粘り強いディフェンスで対抗。第4ゲームから3ゲームを連取し、4-2とリードする。

 しかし第8ゲームではティームがストローク戦で左右に大きく揺さぶられ、15-40とピンチに。1本は凌ぐも次のポイントで相手の強烈なリターンにミスを誘われ、痛いブレークバックを献上。その後は両者キープを続けてタイブレークへと突入する。
  ここでは相手のダブルフォールトを皮切りに幸先よく3-0としたティームだったが、以降は自身のリターンミスやスライスのロングアウトなど不用意な失点が重なって流れを失い、セットポイントも取り損ねて6-6に。再びリターンミスを犯して逆転を許すと、最後は大きくロングアウトして第1セットを失った。

 第2セットはティームが相手に主導権を握られる。アウェーの中で冷静なプレーを続けるダルデリを崩せず、ストローク戦でのミスが響いて第1、5ゲームでサービスダウン。そのまま1時間31分で力尽きた。

 試合後には輝かしい功績を残したティームを称える形で特別セレモニーを挙行。ATP(男子プロテニス協会)公式サイトはティームのコメントを次のように紹介している。

「私はこの数カ月、たくさんの素敵な別れを経験してきましたが、今日はこれまでの素晴らしい年月に感謝の気持ちを伝えたいと思います。私はこのキャリアの一部に過ぎない存在です。全ての旅路はまさに夢のようなもので、今日という(特別な)日を皆さんに捧げたいと思います。これ以上のものは想像できませんでした。本当にありがとう」

 ティームはこの試合に勝てば2回戦で錦織圭(元4位/141位)と対戦する可能性があったが、共に初戦で敗れたため、最後の対決は実現せず。ファンにとっては残念な結末となってしまったが、今はただティームの第2の人生が幸多きものになることを祈りたい。

文●中村光佑

【動画】ティームの現役ラストマッチ「エルステ・バンクOP」1回戦ハイライト

【画像】ティームのフィジカルが可能にするオープンスタンスでの片手打ちバックハンド連続写真

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