ロシアによるウクライナ侵攻からすでに2年半以上。9月に米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じた両軍兵士の死傷者数は約100万人。両国が今抱える最大の課題は、消耗しきった兵力をいかに補強するかだとされている。
そんな中、10月17日にはウクライナのゼレンスキー大統領が、訪問中のブリュッセルのNATO本部で会見を開き「北朝鮮が私たちと戦うために1万人の兵士を送る準備をしていることを知っている」と述べ、北朝鮮による本格的な大規模派兵について言及した。
当初は2000人とも3000人とも言われていた派兵が、同氏が言う1万人規模ともなれば、ロシア軍にとっては、まさに願ったり叶ったり、ということになる。
「キャンベル米国務副長官は、北朝鮮からロシアへの砲弾やミサイルなどの物資支援が増加する兆候がある、としたものの、兵士派遣については精査中と述べるに留まっている。むろんロシア政府も一連の報道について『フェイク』と切り捨てています。ただ、韓国の国防白書によれば、現在、北朝鮮が維持する現役部隊は約128万人で、そこから1万人規模の軍隊が派兵されるとなれば両国間の軍事協力が大きな一歩を踏み出したことになる。ウクライナにとっては大きな脅威となることは間違いありません」(ロシアウォッチャー)
一方、ウクライナでも兵力補給に関し、大きな動きが起こり始めている。女性への「徴兵制」導入に関する議論だ。
ウクライナ政府系メディアによれば、今年1月時点で軍務に就く女性は約4万5000人だが、さらなる女性兵士動員を、という声が広がりを見せている。同軍の前総司令官・ザルジニー駐英大使は17日、英王立国際問題研究所の講演で「欧州を戦争から救うために女性を徴兵する必要があるなら、私たちは必ずそうする」と発言。会場からは大きな拍手喝采が起こったといわれる。
「ウクライナ軍の女性兵士は軍全体の2割程度で、以前は戦闘地域で活動することには制限が設けられていました。そのため軍で勤務する女性たちは、主に会計係や補助的な立場の仕事に就き、戦闘任務に就くことはなかった。しかし、2014年にロシアがクリミア半島を併合し東部ドンバス地方が攻撃されたことで、女性たちの間で前線で戦う『ボランティア大隊』が組織されたんです。ただ、当初は正規軍ではなく、任意組織という位置づけだった。しかし、この数年の活躍もあり、戦闘部隊が正規軍に取り込まれ、女性兵士も男性と分け隔てなく戦場に出ることが認められるようになったんです」(同)
10月11日、NATOの女性リーダーシップに関する公開フォーラムに出席した、同国のステファニシナ副首相も「22年のロシア侵攻以降、ウクライナ軍で働く女性の数は増えており、1万人以上の女性兵士が最前線で戦闘任務に就いている」と強調。当然そこには、女性たちもいまこそ国のために立ちあがってほしい、というメッセージが含まれている。
「現状で女性に対し『徴兵制』を敷くとなれば相当な反発もあるはず。しかし、北朝鮮がロシアに加担しどんどん北朝鮮兵士が流入してくるとなれば、最終的には数で迎え撃つしか方法はない。政府としても、今後はさらに女性兵士獲得に本腰を入れていくことになることが考えられます」(同)
となれば、戦場でウクライナ女性兵士と、北朝鮮兵士による攻防戦が繰り広げられる可能性もあるけだが、はたしてこの戦いに終止符が打たれる日は来るのだろうか…。
(灯倫太郎)