なぜユニクロは景気低迷が深刻な欧州で支持されているのか? 中国SHEINにはないユニクロの唯一無二の強み

ユニクロを展開するファーストリテイリングの業績が絶好調だ。2024年8月期の売上収益は前期比12.2%増の3兆1038億円、営業利益は同31.4%増の5009億円だった。2期連続での増収、営業増益だったが、その中でも海外ユニクロ事業が2割の増収と伸びが著しい。一体なぜ欧州でユニクロがそんなにも支持されているのだろうか。

柳井会長「欧州、北米でそれぞれ No.1 ブランドになりたい」

ファーストリテイリングは2024年8月期に初めて売上収益が3兆円、営業利益が5000億円を突破した。

2021年8月期の売上収益が2兆1329億円だったのが、わずか3年で1兆円もの売上を積み増したことになる。

2025年8月期の売上収益は前期比9.5%増の3兆4000億円、営業利益は同5.8%増の5300億円を予想している。1割近い増収を計画しており、勢いが衰える様子はない。

一方で2024年8月期の国内ユニクロ事業は4.7%の増収で、売上収益は9322億円。国内のユニクロは売上が1兆円に届いておらず、堅調に推移しているものの成長スピードは緩やかだ。

要するに業績の急拡大を支えているのは海外ユニクロ事業である。2024年8月期の売上収益は前期比19.1%増の1兆7118億円だった。

ユニクロの海外事業はかつて中国が成長をけん引していたが、現在は弱含んでおり、2024年6-8月は減収だった。その背景には景気の冷え込みがありそうだ。

中国は2024年7-9月のGDPがプラス4.6%だった。政府が目標とする5.0%前後を2四半期連続で下回ったことになる。

特に個人の消費が弱い、2024年9月の小売り売上高は前年同月比3.2%の増加だった。

景気のバロメーターともいうべき不動産の低迷も著しく、回復する兆しが見られない。ユニクロの中国事業は、長い冬の時代を迎える可能性もある。

一方、好調なのが欧州だ。2024年8月期の売上収益は2765億円。前期の1.4倍に急拡大したのである。

ユニクロは2001年にロンドンに出店して海外初進出を果たした。しかし、大赤字を出して撤退をしている。それだけにイギリスを含む欧州エリアで成功した意味合いは大きい。

柳井会長は10月10日の決算説明会で、「欧州、北米でそれぞれ No.1 ブランドになりたい」と語り、「世界の主だった市場で No.1 にならない限り、真のグローバルブランドにはなり得ないと思います」と続けた。

欧州でシェアトップを獲ることは悲願とも言えるものなのだ。

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アバクロとGAPはアメリカ以外のエリアで大苦戦中

ユニクロが得意とするイギリスやフランス、ドイツが好景気に沸いているかというと、決してそんなことはない。むしろ景気低迷が深刻化している。

それでは、なぜユニクロが支持されているのか。

そこには消費者意識の変化が背景にあり、ユニクロのブランドが持つ「低価格×素材・機能性」が、欧州の人々に受け入れられるようになったのである。

ユニクロは”LifeWear(究極の普段着)”をテーマとし、リネンやカシミヤ、繊細な糸を生み出す羊の毛を使ったエクストラファインメリノなど、天然素材を活かした衣類を低価格で提供している。

欧州では、このような天然素材の商品の売れ行きがいい。

ここでキーワードとなるのがインフレである。

欧州では2022年から過度なインフレが進行し、消費者物価指数は10%を超えて記録的な上昇が続いていた。

それにより、消費者はファッションにかけるお金を節約するようになった。

デロイトトーマツは、「グローバル消費者動向調査」にて、欧州の消費に関するデータを公開している。その中に生活費の項目別出費比率を示したものがある。

それによると、イギリスの中間層が2021年10月に衣服・パーソナルケア商品に使った金額の割合は全支出額の10%。しかし、2023年10月は7%まで下がっている。低所得者は11%から10%、高所得者は9%から7%に減った。

この傾向はフランスにも当てはまる。中間層がファッションにかけるお金は、10%から8%に低下しているのだ。

こうした消費トレンドの影響を受けて苦しんでいるのが、中価格帯のファッションアイテムをそろえるブランドだ。

ABERCROMBIE & FITCH(アバクロ)は2019年6-8月のアメリカ以外のエリアの売上高が2億9700万ドルだったが、2024年6-8月は1億9900万ドルとなった。なお、欧州はその8割を占める主力エリアだ。

GAPもアメリカ・カナダ以外のエリアは苦戦している。2019年6-8月の売上高は4億1900万ドル、2024年6-8月は1億4400万ドルだった。ヨーロッパは3割ほどを占めている。