ローソンの鮮烈F1カムバックが角田裕毅を刺激する。RB代表「ユウキがさらなるレベルに到達するチャンスだ」

 RBのローレン・メキーズ代表は、リアム・ローソンがアメリカGPで鮮烈なF1カムバックを果たしたことで、チームメイトで“先輩”の角田裕毅はさらにギヤを上げる必要に迫られると語った。

 2025年以降にシニアチームのレッドブル・レーシングでマックス・フェルスタッペンのチームメイトに誰を起用するべきか、レッドブル陣営が選択肢を検討する中、ローソンはダニエル・リカルドに代わり、残り6戦という状況でRBのレギュラーシートを掴んだ。

 現在レッドブル・レーシングに乗るセルジオ・ペレスは、ドライバーズタイトルを争うフェルスタッペンやコンストラクターズタイトル防衛を目指すチームに必要な安定感を示すことができておらず、2年契約を結んでいるものの、いつでもシートから降ろされる可能性がある。

 リカルドはペレスの後任候補としてRBからF1復帰を果たしたが、レッドブル陣営を納得させることはできず。シンガポールGPを最後にシートから降りることとなった。

 後任を務めるローソンは、2023年に負傷したリカルドの代役として5戦に出場。今年、キャリア2度目のF1挑戦の機会を得た。

 そのローソンはアメリカGPで印象的なカムバックを見せつけ、予選Q1では3番手タイムを記録。これは角田が予選セッション全体で記録したモノよりも速いタイムだった。

 ローソンはパワーユニット(PU)交換のペナルティによって19番手からのスタートとなったものの、トップ10圏内からスタートした角田を上回る9位でポイントを獲得した。角田は今、これまでで最も強力なチームメイトのひとりに対峙している。

 メキーズ代表はローソンの週末を「ほぼ完璧」と評し、チャンスをモノにしたのは舞台裏での12ヵ月に及ぶドライバーの努力の賜物だと語った。

「とても印象的な週末だった」とメキーズ代表はmotorsport.comに語った。

「運や才能だけではここまでたどり着かないのだから、我々は彼にとても満足している」

「彼はこの1年を通して、エンジニアリングオフィスでオンボードを見たり、データを見たり、シミュレータで何時間も作業したりしていた。実際にマシンを走らせる機会はほとんどなかった。そして、ほとんどリターンがない中で彼が費やしてきた時間の長さを評価しなければならない」

「彼は100%マシンに飛び乗る準備ができていた。よくやったよ。Q1では既にメガなパフォーマンスを発揮していて、これが週末の結果になると思っていた」

「その後は完璧なレース、適切なペースだった。正直なところ、これ以上求めることはない。完璧なスタートだった」

 ローソンのレース運びが錆びついていたという証拠もない。土曜日のF1スプリントでは、アストンマーティンのフェルナンド・アロンソに対してアグレッシブなディフェンスを見せ、アロンソの逆鱗に触れるというシーンもあった。

「あれも新鮮だった。彼は考え過ぎることはなく、正しい方法で自分のポジションを守っていた。彼のような人で見たいのはそういうモノだ」とメキーズ代表は語った。

「彼は1年間レースに出ていないだけでなく、ここオースティンを走るのも初めてだ」

 ローソンのパフォーマンスは角田の心を揺さぶったようで、角田はローソンの採ったハードタイヤからミディアムタイヤに履き替える“逆1ストップ戦略”に苛立ちを覚えた。

 角田は10番手からスタートしたものの、第1スティントをミディアムタイヤで走ったことで、ピットストップのタイミングでローソンに先行を許し、最終的に14位でのフィニッシュとなった。

 角田のフラストレーションを理解できたかと訊かれたメキーズ代表はこう答えた。

「もちろんだ。オーバーカットはそうそう起きることじゃない」

「リアムにとっても、(ウイリアムズのフランコ)コラピントにとっても、リバース戦略が非常に上手く機能したというのは明らかだ。戦略面で彼らはリスクを取ったのだ」

「もちろん、後方スタートの方が判断はしやすいが、特に上手くいった」

「ユウキにとっては、トラフィックに巻き込まれる時間が少し長かったから、よりフラストレーションの溜まるレースになった。最初のスティントで8番手につけていたのに、ポイント圏外になってしまうのはいつだって厳しいことだ」

 ニック・デ・フリーズやリカルドをあっさりと打倒してきた角田だが、ローソンはレッドブル・レーシング昇格競争において、これまでで最も強力なライバルになりそうだ。

「彼(角田)にとっては、さらなるレベルに到達するチャンスだ」とメキーズ代表は言う。

「繰り返しになるが、我々が望んでいるのは、ふたりのチームメイトが互いにプッシュし合うという状況。片方があるコーナーで速く、もう片方が他のコーナーで速い。そしてふたりとも安定したラップを刻むことができる」

 RBはコンストラクターズランキング6位争いで、ここ数戦で勢いのあるハースに先行を許しており、再びリードを奪うためにはドライバーふたりがマシンから全てを引き出す必要がある。

 ハースは母国戦となったアメリカGPで大型アップデートを投入。夏にアップデートで道を踏み外したRBも、ここでのアップデートで一歩踏み出した。

「我々はふたつの異なるセットアップで走ったから、新しいアップデートを通じて学ぶことが沢山ある」とメキーズ代表は言う。

「バルセロナでは、上手く機能しないアップデートがあった。その根源を理解するのに時間がかかった。マシンの挙動を変えることができたのはバルセロナ以来かもしれない。もっとポテンシャルがあることを期待している」

「この週末、マシンに素晴らしい仕事をしたハースに、我々は2ポイント差をつけられてアメリカを後にする。しかし残り5戦、(アップデートは)ユウキとリアムと共に戦いに挑めるという自信をもたらしてくれた」