10月14日には中国軍が台湾沖合の海上と空域を囲む形で大規模な軍事演習を実施。20日にはこれに対抗し、米軍・カナダ軍の艦艇が合同軍事演習で台湾海峡を通過するなど緊張感が高まった台湾情勢。

 同国の建国記念日にあたる10日の「双十国慶節」には台北市内で軍事パレードが行われ、中国の対応は対中強硬路線を貫く今年5月に就任した頼清徳総統へのけん制と見られている。そうした中、この頼政権で8月から政務顧問を務める1人の日本人男性が注目を集めている。

 その人物とは、台湾で展開する人気ラーメンチェーン「Mr.拉麺」を経営する野崎孝男氏。総統個人や政権に対するブレーンを外国人が務めるのも異例のことだが、ラーメン店オーナーという経歴にも驚きだ。

「現在の台湾政府には有能な人材であれば外国人でも受け入れる寛容さがある。前総統の蔡英文政権下で国策顧問を務めた胡清嫻さんもベトナム人女性です」(台北在住ライター)

 しかも野崎氏は、政治や行政の知識に乏しい素人ではない。もともと東京の行政専門紙「都政新報」の記者で、2003年には当時29歳の若さで練馬区議会議員選挙に当選。07年の統一地方選では惜しくも落選し再選は叶わなかったが、一期4年間の議員経験がある。

 その後、国立台湾大学法学院に留学し、現地の女性と結婚。「Mr.拉麺」のほか法律コンサル事務所も経営しており、16年からは当時台南市長だった頼総統からの要請で同市の外交顧問も務めている。

「台南市は野崎さんが顧問に就任した16年以降、弘前市や山形市、京都府など日本の複数の自治体と友好都市や協力推進の協定を結んでいます。その立役者が彼で、頼総統からは絶大な信頼を寄せられています」(同)

 また、16年の台湾南部地震や今年4月の花蓮地震など大規模な地震が発生するたびに現地で炊き出しなどのボランティア活動を実施。本業のほうでも台湾メディアにたびたび登場する名物社長として、現地での知名度も高い。

中国による軍事侵攻の脅威に晒される台湾にとって、日台関係のさらなる強化は現政権にとっての大きな課題。その点において、日本人で政治とビジネスに精通する野崎さんは替えが利かない存在です」(同)

 台湾政府の日本人政務顧問に課せられた役割は、我々が考えている以上に大きいようだ。

※画像は、野崎さんが経営する「Mr.拉麺

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