かつてサンライズで制作された『無敵超人ザンボット3』『機動戦士ガンダム』『最強ロボ ダイオージャ』には「槍が武器」という共通点があります。なぜ、1970年代から80年代に登場したロボットたちは槍を持っていたのでしょうか?



構えているのが「ザンボット・ブロー」、両端とも刃になっているのが特徴。「超合金魂 GX-84 無敵超人ザンボット3 F.A.」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

【画像】ご立派な獲物をお持ちで…こちらが「ダイオージャ」ほか当時の主だった槍使いロボの面々です(8枚)

かつてのロボットアニメでは槍はメインウェポンのひとつ

『無敵超人ザンボット3』『機動戦士ガンダム』『最強ロボ ダイオージャ』……かつてサンライズで制作されたこれらロボットアニメの主役機には、「槍が武器」という共通点があります。ほかにも、1970年代から80年代に登場したロボットたちには、槍を持っているものがわりと見られます。

 それぞれテイストの異なる作品ながら、なぜ「槍」なのでしょうか。

 槍は長い柄の先に鋭利な刃物を着装した武器であり、最古の狩猟道具として人類の歴史に貢献してきた存在です。銃が一般化するまで人類の戦いの歴史で最も重要な兵器のひとつであり、古今東西を問わず多くの戦場で使用されてきました。当然ながら戦闘を重視するロボットアニメにも槍はしばしば登場し、印象的な見せ場を作っています。

 ロボットが槍を使用するようになった最初期の作品として挙げられるのが、上掲した、1977年から78年にかけて放送された『無敵超人ザンボット3』になるでしょう。ザンボット3が使用する「ザンボット・ブロー」は両端が穂先になっているのが特徴で、通常は「サイ(琉球武術の武具)」として使用しているふたつの「ザンボット・グラップ」を合わせ、柄を伸ばして槍として使用します。なお、片方の穂先を収納して刀として使用した場合は「ザンボット・カッター」となります。

 使用頻度としてはカッターよりもブローの方が多く、回転させて敵の攻撃を防いだり、敵を刺し貫いて行動不能にし、必殺の「ザンボット・ムーン・アタック」へとつなぐ役目を果たしたりしていました。しかし残念ながら、敵の「メカ・ブースト」に直接とどめを刺したことはありません。カッターでは3話と21話の二度、倒しているので、少々不遇な武器だったと言えるでしょう。

 1981年から82年にかけて放送された『最強ロボ ダイオージャ』でも「ダイオージャ・ジャベリン」として槍が登場しました。ジャベリンとは「投槍」を意味する言葉ではありますが、作中では普通に格闘用の武器として使用しています。ダイオージャ・ジャベリンの特筆すべき点としては、ダイオージャに合体する前のメカである「エースレッダー」「アオイダー」「コバルター」の使用する武器が組み合わさることで完成することが挙げられるでしょう。ロボットだけではなく武器も合体するのはかなり珍しい事例だからです。

 なおダイオージャの必殺武器は、シールドに収められた「雷鳴剣(電光雷鳴剣)」であり、ダイオージャ・ジャベリンはサブの武器です。しかし実際に使用する場面を観ると、「和」を感じさせるデザインであるダイオージャには、ジャベリンの方が似合っていると感じられます。ロボットアニメの動きには時代劇の殺陣が取り入れられている部分があり、基本的に時代劇で盾は使用しないため、槍の見せ方や動きの方が、ダイオージャにはあっていたのかもしれません。



「ビームジャベリン」は、ビームサーベルの柄を伸長し、刃の部分をビームで形成する。「RG 1/144 RX-78-2 ガンダム Ver.2.0用武器セット」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

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槍の登場はスポンサーのご執心?

 そして1979年から1980年にかけて放送された『機動戦士ガンダム』にも「ビームジャベリン」として槍が登場しています。第11話「イセリナ・恋のあと」で「アムロ」が安全弁の解除法を発見して使用可能となり、同話では「ガンダム」が敵輸送機「ガウ」の翼の上を歩き回りながら、ジャベリンで翼を切り裂く光景が展開されました。

 一見するとシュールな場面にも見えますが、マンガ『機動戦士ガンダム フラナガン・ブーン戦記』(ヒーローズ)第2話「イセリナ出撃す」では、ジオン側から見たガンダムがガウの翼を切り裂くシーンがどれほど恐ろしいのかが描写されています。一読の価値はあるので興味のある方はぜひご覧になってはいかがでしょうか。

 なお、後続の作品でもジャベリンは使用されており『機動戦士ガンダム UC』では「ビームサーベル」を受け止めた「ジュアッグ」に対し、「ジムIII」がジャベリンを用いて装甲の貫通に成功しています。ソードと比較してエネルギーを一点に集中できるジャベリンは、状況によっては有効な装備であることを示したシーンといえるでしょう。

 しかしなぜ、これらのロボットは、必須とはいえない槍を装備していたのでしょうか?

 その理由として、上記に挙げた3作品は、すべておもちゃメーカーの「クローバー」(1983年倒産)がスポンサーだった点が挙げられます。クローバーは何故か槍に執着があったようで、特にガンダムのジャベリンについてはクローバー側の要望で取り入れられたことが後に明かされています。

 1979年の末に発売された「機動戦士ガンダム DX合体セット」には、作中に登場しないオリジナルの槍斧「ソード・ジャベリン」が付属しており、異彩を放っています。マシン本体よりも大きな武装は見栄えがするのも、クローバーが槍にご執心だった要因なのかもしれません。子供は、大きくて強そうなものが大好きという考え方は、決して間違いとはいえないのですから。