マクラーレン、チームオーダーはしないと宣言「将来のチャンスを破壊してしまう戦術だ」

 マクラーレンのチーム代表であるアンドレア・ステラは、F1ドライバーズタイトルを狙うランド・ノリスを助けるためにオスカー・ピアストリにチームオーダーを出し、チーム内のバランスを”破壊”するつもりはないと主張した。

 ノリスは3連覇中の王者、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)を追い詰め、その差を縮めている。しかしアメリカGPではその差が広がってしまい、残り5戦でその差は57ポイント。ノリスは逆転でのタイトル獲得に向けて「勢いが殺されてしまった」と語った。

 こうした状態で重要なのがチームメイトのサポートだ。しかしマクラーレンは今季これまでに、チームオーダーを出さなかったことでノリスが多くのポイントを取り逃がしてしまったと考えられている。

 最も顕著だったのはハンガリーGPで、ピットストップで順位が入れ替わり首位に立ったノリスに対して、ピアストリに勝利を譲るようチームオーダーが出されている。今、この判断を振り返るとノリスを勝たせておけばよかったのにと考える者もいるだろう。

 かつて常勝チームだったマクラーレンだが、10年以上タイトルを争うような立場になく、まだノウハウを学んでいる最中のフレッシュなマネジメント体制でこのシナリオに適応しなければならなかった。

 motorsport.comの独占インタビューに応じたステラは、ナンバー1ドライバーとナンバー2ドライバーの力関係について次のように語っている。

「ドライバーのマネジメントは、マシンの競争力と関連して考えなければならない」

「マネジメントに線引きは常に必要だが、10位や11位を争うのであれば、すべての努力は競争力を発揮することに向けられる。上位を争うようになると、シナリオは変わってくる」

「我々は常に最大限の協力を重視してきた。これはチーム代表やランド、オスカーよりも大きな目標があるからだ。それがチームの、マクラーレンの利益だ。この点はどんな状況でも譲れない」

「我々は常にドライバーのマネジメントに取り組んできたし、一般的には、いくつかの原則に従ってサーキットに臨んできた。最優先はチームの利益であり、2番目はスポーツマンシップあるいは誠実さだ」

「これらは非常に重要な価値観であり、我々は両ドライバーに対して公正かつ正しく行動したいし、レースで勝つために必要なスキルと全体的なパッケージを持っている2人の才能あるドライバーがいれば、この側面はさらに重要になる」

「ランドだけでなく、オスカーを育て、成長させるために努力してきた。そしてマイアミGPでランドとオスカーに競争力のあるマシンを提供できて以来、マクラーレンはコンストラクターズ選手権で最多ポイントを獲得するチームとなった」

「このような状況になったとき、多くの人が望む状況を定義しなければならない。どのようにドライバーをマネジメントするのか? 我々は常に自分たちの原則から出発し、彼らと交渉はしない」

 ステラ代表は、ナンバー1ドライバーを決める戦術の危険性について指摘し、次のように語った。

「ナンバーワンもナンバーツーもいない。それはメディアやパブでのおしゃべりには効果的なシナリオだが、F1チームを管理する上では将来のことも考えなければならないからよくない」

「今シーズンに勝てるかどうかはわからないが、25年、26年、27年に勝てるようなポジションにいたいという意識はある。もし2024年シーズンのマネジメントでバランスを崩してしまったら、その次の年に強固な基盤を持つことができなくなってしまう」

「これが私の考えるF1での仕事の進め方だ。複雑な状況が常に起こりうることは承知している。『これからオスカーはランドの後ろにいなくてはいけない』というような”数学的”なアプローチについて人々が話しているのを耳にしたとき、私は『ランド自身はオスカーに”待機”してほしいとは思っていない』と返した」

「団結したコンパクトなグループを作ることが私の挑戦だ。常にいい仕事ができるとは断言できないが、輝かしい週末を過ごすことが目的ではなく、この先何年もいい結果を残すために、我々はここで働き続け、築き上げているのだということを常に明確にしておかなければならない」