F1アメリカGPでは安定感に欠いたメルセデス。ただ彼らとしては、不調に陥った理由に見当がついているようだ。
メルセデスは金曜のスプリント予選で、ジョージ・ラッセルとルイス・ハミルトンが共にポールポジションも狙えるパフォーマンスを見せた。しかしながらそれ以降は調子を落とすことになり、特にハミルトンは予選19番手に終わり決勝でもターン19でコースオフして早々にリタイア。土曜の予選でもラッセルが同じくターン19でクラッシュしており、ふたり共マシンに手を焼いている様子であった。
こういった状況から、アメリカに向けて持ち込まれたW15のアップデートパッケージによって予期せぬ問題が引き起こされたのではないかと言われた。
チーム代表のトト・ウルフは、今回のアップデートが不調の原因とは考えておらず、4戦で3勝を挙げた夏前の好調はとうに過ぎ去っており、再びマクラーレン、レッドブル、フェラーリの後塵を排する立場になったと感じている。
「我々はまた追いかける側になってしまった」
「夏前の状況には戻っていない。週末を迎えて、このレースで勝つだろうと考えられる状況ではなく、今のところ『我々は4番手のチームだ』と考えるような状況だ」
チームはマシンの状況について理解しようとしている最中だが、テクニカルディレクターのジェームス・アリソンは、アメリカで起きたことはシンプルに説明できると考えている。
アリソンは、アメリカGPの金曜日とそれ以降で何が悪化してしまったのかについて、グラウンドエフェクトカーから最大限のダウンフォースを引き出すべく、車高を下げすぎてしまったのではないかと私見を述べた。
「それが一番重要な問題だ」
「ジョージがあのセッション(スプリント予選)でポールをとりそうになっていただけでなく、ルイスもそこに加わりそうだった。彼もコラピント(フランコ・コラピント/ウイリアムズ)に絡んでしまうまでは上回るタイムを出していたからね」
「なぜその調子がそれ以降の週末で出せなかったのか、これは我々にとって重要な問題だ。私の推測では、路面に少し近付きすぎていたと思う」
「今のマシンはとにかく(車高を)低く走った方が良い。地面に近付くことで、ラップタイムを上げることができる。しかしそれをやり過ぎると、マシンは不快な挙動を示すことになる」
「もしバンプにうまく乗れなかったらマシンは不安定になり、リヤが滑り出し、例え良いパフォーマンスの時でも台無しになってしまう」
「私の推測では、地面に近付き、(サスペンションなどを)硬いマシンにする中で、少し運に頼りすぎていたのかもしれない」
そしてアリソンは、チームは最新のアップデートパッケージの使用を継続するかどうか検討する必要があるとハミルトンが示唆した一方で、そのパッケージによって前進していることに疑いの余地はないと考えており、ハミルトンとラッセルのスピンも異常な事態だったとはいえ、アップデートが引き金ではないとした。
「我々の計測結果は、アップグレードパッケージが期待通りに機能していることを示唆していた。ダウンフォースもあった」
「スピンの前に、マシンの床面の気流に何か問題が生じているような様子も見られなかった。そういった理由から、アップデートは良好で、今シーズンの残りもその恩恵を享受できると考える」
「今回異常なほど何度もバリアに突っ込んでいった不安定さに関しては、車高が低過ぎて尚且つサスペンションが硬過ぎたゆえに、ハンドリングが許容できないほど悪化していたからだと考える」