現地10月25日から開幕するドジャース対ヤンキースの2024年ワールドシリーズ。最大の注目はMLBを代表する2人のスラッガー、大谷翔平とアーロン・ジャッジの競演だろうが、実は秘かな注目ポイントがある。ミゲル・ロハス(ドジャース)とジャズ・チゾムJr.(ヤンキース)の“遺恨対決”だ。
2020~22年の3年間、マーリンズでともに戦うチームメイトだった2人。だが、今回の対戦は、かつては弱小チームで共闘していた2人が最高の舞台で再会する…というような麗しい友情物語ではない。なぜなら今の2人は文字通り「犬猿の仲」だからだ。
ロハスは今季はメジャー11年目、35歳のベテラン。以前からリーダーシップには定評があり、今季も開幕直前に遊撃転向が決まったムーキー・ベッツのために早出特守に付き合い、アドバイスを送るなどして貢献。ドジャース1年目の大谷にも「新天地に早く慣れるようにサポートしたい」とメッセージを添えたワインを贈るなどサポート役を買って出ていた。
マーリンズ時代も若手に自腹でスニーカーを買い与えたりとしていた一方で、時にはメジャーリーガーとしての在り方を厳しく説くこともあったようだ。
よくある話だが、“職場の先輩”のこうした姿勢はありがたい反面、若手にとってはうるさいものだったりする。特に、若い選手の多かったマーリンズでは慕う者も多かった一方でわずらわしく感じる若手も少なくなかった。まさにその急先鋒がチゾムJr.だったのだ。
チゾムJr.といえば、髪をブルーやパープルに染めたり、ホームランを打った後に“ユーロステップ”(バスケットボールで左右にジグザグにステップを踏む動作)のパフォーマンスを披露したりと、球界きっての自由人。若年層のファンへのアピールのため、人気ゲーム『MLB The Show 23』のパッケージアスリートに抜擢されたこともある。
職人気質のリーダーであるロハスとはまさに水と油で、気が合うはずはない。今年3月、チゾムJr.はロハスについて「長年チームにいたし、球団はリーダーとして見ていたけど、リーダーに適した人物ではなかった」と痛烈な批判を展開した。
チゾムJr.が語ったところによると、こんなことがあったらしい。チームのトップ有望株だったある選手が、メジャー初本塁打を放った。テンションが上がった彼は、次の打席でソト・シャッフル(現ヤンキースのフアン・ソトが打席内で投手を見ながら足を動かすルーティンのこと)を見せたという。その選手は同じドミニカ共和国出身のソトのファンでもあった。
この行動がロハスの逆鱗に触れた。チゾムJr.によれば、ロハスはその選手を怒鳴りつけ、隣に座って「お前はソトじゃない。そんなことはするな」と諭したという。“エンジョイ派”のチゾムJr.にしてみれば、「昇格したての、ベースボールを楽しんでいる選手になぜわざわざそんなことをする必要があったんだ!?」というわけである。同じようにチゾムJr.もロハスから小言を頂戴することが多かったのは想像に難くなく、かくして2人の確執は決定的となった。
そんな2人が奇縁と言うべきか、東西の名門チームに籍を移し、ワールドシリーズの大舞台で対決することとなった。ロハスが遊撃や二塁を守っている時に、チゾムJr.が二塁ランナーに立つ。あるいはチゾムJr.が三塁を守っている時に、ロハスが三塁ランナーに立つ、というような光景がシリーズ中に見られるかもしれない。2人がその時、どんな振舞いをするのか……ある意味では大谷×ジャッジの対決と同じくらい注目かも!?
構成●SLUGGER編集部
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