「彼は最高だったよ。たくさんのショットを決め切っただけでなく、コート上で動き続けていた。ディフェンスでもいいプレーをしてくれたね」
そう語ったのは、ダラス・マーベリックスのルカ・ドンチッチ。現地時間10月24日に迎えたシーズン開幕戦で、マブズはサンアントニオ・スパーズに120-109で勝利。エースが称えた“彼”とは、今季加入したクレイ・トンプソンのことだ。
今夏に6チーム間の大型サイン&トレードでマブズ入りした34歳のベテランシューターは、プレシーズンマッチは3試合の出場で平均7.0点、フィールドゴール成功率24.1%(7/29)、3ポイント成功率33.3%(6/18)と不発だった。
しかし限られた期間でドンチッチとのケミストリーを構築し、開幕戦では26分5秒の出場で22得点、7リバウンド、3スティールと躍動。代名詞の3ポイントは成功率60.0%(6/10)と高精度なショットを披露した。
第4クォーター残り10分29秒にはドンチッチのパスとデリック・ライブリー二世のスクリーンで完全ノーマークになり、得点を確信したドンチッチはトンプソンがシュートを放つ前に自陣へ戻るハイライトシーンも見られた。
さらに残り8分14秒に6本目の3ポイントを決めたことで、トンプソンはマブズのデビュー戦として球団史上最多の3ポイント記録を樹立。ドンチッチは新たなスコアラーの加入に「彼のような男がいてくれるとプレーがずっと楽になる。人生を楽にしてくれるね。彼を見つけ出せばいいんだから」と称えていた。
そのドンチッチも左ふくらはぎの打撲でプレシーズンを全休していたが、この試合ではゴール下から右コーナーに背面ノールックパスを通すなど随所に“ルカ・マジック”を披露。フィールドゴール成功率こそ36.0%(9/25)にとどまったものの、ゲームハイの28得点に10リバウンド、8アシストをマークして勝利に導いた。
マブズは両選手のほか、カイリー・アービングが15得点、2スティール、ライブリー二世が15得点、11リバウンド、6アシスト、PJ・ワシントンが11得点、5リバウンド、ジェイデン・ハーディが11得点と続いた。
試合後、トンプソンはドンチッチと初共演した感想を次のように語っている。
「ものすごい才能の持ち主だね。もう意味がわからないよ。これまで最高の選手というのは、誰よりも高く跳び、速く走るものだと教えられてきた。けどルカはその定説に逆らっている。彼は自身のスピードとペースでプレーし、ゲームを操ってしまう。彼のパスの受け手になれたこと、そして最高のショットが打てて嬉しいね」
長年在籍したゴールデンステイト・ウォリアーズから新天地に移ったトンプソンは「最高のデビュー戦になった。10月のたかが1試合ではあるけど、気分はいいね。ものすごく楽しかったし、最高の気分だよ」と興奮を隠せずにいた。
昨季NBAファイナルまで勝ち上がったマブズにとって、今季見据えるのは2011年以来、球団史上2度目のリーグ制覇。次戦26日のフェニックス・サンズとのアウェーゲーム以降は7試合中6試合がホームで行なわれる。この序盤戦の間に、ケミストリーを醸成させていきたいところだ。
文●秋山裕之(フリーライター)