【アマチュア野球ウォッチャーやまけんの2024ドラフト採点】大物獲得に成功した楽天、中日は文句なしの「A」。「C」評価に甘んじた2球団は...<SLUGGER>

 金丸夢斗(関西大)、宗山塁(明治大)という投打の「タレント」を中心に回った今年のドラフト。各球団の課題とチーム編成状況を踏まえ、関東を中心に全国のアマチュア野球を球場で年間約150試合観戦するアマチュア野球ウォッチャー・やまけんが採点した。

【西武】
評価:B
1位の齋藤大翔(金沢高)は高校生屈指の身体能力と守備力を誇り、源田壮亮の後釜として期待したい好素材。さらに1位指名が有力視されていた強打者・渡部聖弥(大阪商業大)を2位で指名することにも成功した。3位の狩生聖真(佐伯鶴城高)、4位の林冠臣(日本経済大)も投打にスケール感がある逸材で、育成の手腕が試される。即効性は高くないかもしれないが、将来を見据えた再建の第一歩としては好指名だったと言えるだろう。

【中日】
評価:A
No.1投手・金丸夢斗(関西大)に果敢に入札し、交渉権を獲得。万全の状態であれば来季から即エース級の活躍をしてもおかしくない。2位の吉田聖弥(西濃運輸)はフォームの良さが光る好左腕で、22歳だがまだまだ成長を見込める。3位で森駿太(桐光学園高)、5位で高橋幸佑(北照高)と投打の好素材を獲得しつつ、事前に報道のあった石伊雄太(日本生命)の指名にも成功した(4位)。立ち回りも含めて文句のつけどころのないドラフトだった。

【オリックス】
評価:B-
1位の麦谷祐介(富士大)は身体能力と打撃力を武器に1年目から外野のレギュラー争いに加われる存在。2位の寺西成騎(日本体育大)は複数の縦の変化球で勝負することができ、先発・救援両面で起用を見込める。4位の山中稜真(三菱重工East)は左右に長打を量産する左の好打者で、球団としては2017年以来となる社会人野手の指名となった。近年は高校生中心の指名が続いていたが、大学生・社会人を中心とした堅実なドラフトとなった。【ヤクルト】
評価:A-
例年であれば抽選不可避の目玉級投手・中村優斗(愛知工業大)の1本釣りに成功。長年の課題である投手力改善に向けて大きな一歩となった。2位のモイセエフ・ニキータ(豊川高)、4位の田中陽翔(健大高崎高)はいずれも高校屈指の強打者で、次世代を見据える上で貴重な野手を確保できた。内山壮真の手術により先行き不透明な捕手は育成を含めて2選手を指名。編成面の穴埋めとコア・プレーヤー候補の確保を両立した良い指名だった。

【楽天】
評価:A
5球団による競合を制し、20年に一度の逸材・宗山塁(明治大)を獲得。ショートのポジションはもちろん、将来的には中軸を担ってもおかしくない。2位以降では徳山一翔(環太平洋大)、中込陽翔(徳島インディゴソックス)、江原雅裕(日鉄ステンレス)と左右やアングルを変えつつ一貫して球威のある投手を指名。5位まで残った左のスラッガー・吉納翼(早稲田大)まで含め、球団の描いた理想以上の指名だったのではないだろうか。

【広島】
評価:B
事前に公表していた宗山塁(明治大)こそ指名を逃したが、長打力が武器の佐々木泰(青山学院大)の1位指名に成功。4位の渡邉悠斗(富士大)も本塁打量産を期待できるアーチストで、貧打解消に向けて頼もしいピースが2枚加わった。2位の佐藤柳之介(富士大)は1年目からローテーション争いに加われる左腕、3位の岡本駿(甲南大)と5位の菊地ハルン(千葉学芸高)は長いスパンで見守りたい好素材。上手にまとめた指名だった。【ロッテ】
評価:B+
オリックスとの競合の末、大学球界屈指のスラッガー西川史礁(青山学院大)の交渉権を獲得。2位の宮崎竜成(ヤマハ)は報道こそ少なかったものの球団が熱心に追いかけていた左打の内野手で、スピードとパワーを兼ね備える好打者。上位で野手を確保しつつ、将来の先発候補として5位で廣池康志郎(東海大九州キャンパス)の指名にも成功。方針を一貫した強打者中心の指名は、現状の日本人野手に対するメッセージとも言えるだろう。

【DeNA】
評価:C
金丸夢斗(関西大)の抽選に敗れた後は、竹田祐(三菱重工West)に入札。1位候補との報道は少なかったが、ゲームメイク能力の高さに加えて年々球威を増し、即戦力性は今年の候補の中ではトップクラスだ。その後も2位の篠木健太郎(法政大)を筆頭に投手中心の指名でチームの課題にアプローチ。今秋の篠木の登板過多や6位の坂口翔颯(国学院大)の肘の状態など気になる点こそ残るものの、地に足をつけた堅実なドラフト指名だった。

【日本ハム】
評価:B
1位の柴田獅子(福岡大大濠高)は187cm・87kgの体格で投手として最速149キロ、打者として高校通算19本塁打を記録した次世代の二刀流候補。その後も198cm左腕・藤田琉生(東海大相模高)を筆頭に大型投手を連続指名、育成への自信が垣間見える。宗山塁(明治大)の交渉権こそ逃すも、同じ遊撃の守備職人・山縣秀(早稲田大)の指名に成功。全体的には投手偏重だが、支配下5人中4人が野手となった昨年の指名と併せて見るとバランスは悪くない。【阪神】
評価:C
金丸夢斗(関西大)の交渉権を逃すも、同じ左腕の伊原陵人(NTT西日本)を指名。回転数の高い直球は社会人の2年間で大きく伸びただけに、更なる成長の可能性も秘める。2位の今朝丸裕喜(報徳学園高)は将来的に球威がついてくればエースの座を狙える。編成上不安だった捕手や二遊間には独立の町田隼乙(埼玉武蔵ヒートベアーズ)、佐野大陽(富山GRNサンダーバーズ)を充てるなど、独自色を見せつつも着実に課題にアプローチした。

【ソフトバンク】
評価:B-
1位では2度の抽選に敗れ、村上泰斗(神戸弘陵高)を指名。全国大会の経験はないが最速152キロのストレートで勝負できる点が魅力で、投手歴2年半と伸び代もまだまだ豊富だ。内野の世代交代を見据え、俊足の庄子雄大(神奈川大)、右打ちの宇野真仁朗(早稲田実高)、左打の石見颯真(愛工大名電高)とタイプの違う3選手を確保できたのは大きい。即戦力投手の確保も忘れておらず、早くも来季の連覇を見据えている様子が伝わる指名だった。

【巨人】
評価:C+
金丸夢斗(関西大)の獲得を逃した時点で方針転換し、将来の中軸候補となる石塚裕惺(花咲徳栄高)を確保。2位の浦田俊輔(九州産業大)は二遊間守備のスペシャリストで脚力もある。遊撃のレギュラー争いに加わりつつ、吉川尚輝の後釜の二塁も狙える逸材だ。菅野智之のMLB挑戦に備えて即戦力の先発投手を確保したかったが、そちらはFA補強などに期待しつつ、4位の石田充冴(北星学園大付高)を戸郷翔征のように育てられれば理想だ。

文●やまけん

【著者プロフィール】
1999年生まれ、千葉県出身。「一人でも多くのアマチュア野球選手がスポットライトを浴びてほしい」という思いから、関東を中心に全国のアマチュア野球の試合を年間約150試合を球場で観戦するアマチュア野球観戦者。X(旧)Twitter→@yam_ak_en

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