「死ぬ時はグラウンドの上かもしれないね」名将・本田裕一郎の情熱はまったく衰えず。今度こそ国士館を全国の舞台に導けるか

 高校サッカーに携わって、今年で50年目。市原緑で指導者のキャリアをスタートさせた本田裕一郎氏は、習志野や流経大柏で一時代を築いてきた。夏のインターハイ、冬の選手権、U-18高円宮杯プレミアリーグ(前身のU-18高円宮杯全日本ユースを含む)でそれぞれ優勝を経験し、“日本一”は計6回。プロの世界に送り込んだ選手の数は数え切れない。

 習志野では元日本代表MFの廣山望氏(元千葉ほか、現・U-16日本代表監督)、06年ドイツ・ワールドカップのブラジル戦でゴールを決めたFW玉田圭司氏(元柏ほか、現・昌平監督)らを輩出。流経大柏ではFW大前元紀(南葛SC)、MF小泉慶(FC東京)、FWジャーメイン良(磐田)、DF小川諒也(シント=トロイデン)、DF関川郁万(鹿島)らを指導してきた。

 自チームだけでなく、サッカー界全体にも大きく貢献し、11年に創設されたU-18高円宮杯プレミアリーグの立ち上げにも尽力。多岐に渡って活躍し、まさに高校サッカー界の“生き証人”と言えるだろう。

 そんな本田氏も今年5月に77歳を迎えた。だが、その情熱は衰え知らずで、今も並々ならぬ意欲でグラウンドに立ち続けている。

 19年度いっぱいで流経大柏の監督を退くと、20年4月からは国士舘高のテクニカルアドバイザーに就任。18年度以来の選手権出場を目ざし、実質的な監督として辣腕を振るっている。

 千葉県の自宅から通うのではなく、単身赴任で学校周辺に家を借りて指導にあたる。時に厳しい言葉をかけ、人間教育も含めて、子どもたちと膝を突き合わせている。選手の獲得にも力を入れ、これまでのサッカー人生で築いてきた人脈を活かしながら精力的に声をかけ続けてきた。

 だが、昨季までの4年間で全国の舞台に立てず、都大会の壁を破れずにいる。高校サッカー選手権予選では22年度に決勝、昨季は準決勝まで勝ち進んだものの、あと一歩のところで涙をのんできた。
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 そうした状況下で今季から総監督に肩書きを変えた本田氏は、今まで同様に最前線に立っている。選手権出場を懸けた都予選がスタートした10月半ば。グラウンドに現われた本田氏は、自らコーンやマーカーを置いて、身振り手振りで練習メニューを説明する。

 練習後には選手を集め、10分ほど青空ミーティングを実施。選手たちを奮い立たせる言葉をいくつも述べた。その中で最も力を込めて伝えたのが、「負けてしょうがないではダメ」という勝利に対する強い想いだった。

 選手権予選はここからが本番。26日には実践学園との準々決勝が控えているが、本田氏には全国大会出場とともに、もう1つ目標がある。

 先述した昌平の玉田監督、尚志の仲村浩二監督も習志野時代の教え子だ。流経大柏の榎本雅大監督は習志野で指導しただけでなく、前職で監督とコーチの間柄でもあった。

「全国舞台で対戦してみたいよねぇ」と笑みを浮かべた本田氏。「死ぬ時はグラウンドの上かもしれないね」と、サッカーにすべてを注ぐ名将の野心はとどまることを知らない。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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