10月27日、中距離路線の頂点を決める秋の天皇賞(GⅠ、東京・芝2000m)が行なわれる。
大一番を迎える週末。土曜日の雨はなさそうだが、日曜は曇天の予報もあれば、「曇り、時々雨」で、降雨確率は50%と発表しているものもある。ただ、どちらにしても大雨は避けられそうで、仮に悪化しても『良』に近い『稍重』までで、結果を大きく左右することはなさそうだ。
メンバーは多彩だ。昨年の三冠牝馬リバティアイランド(牝4歳/栗東・中内田充正厩舎)。日本ダービー馬が2頭おり、一昨年の覇者ドウデュース(牡5歳/栗東・友道康夫厩舎)と、昨年の優勝馬タスティエーラ(牡4歳/美浦・堀宣行厩舎)。昨年の天皇賞(春)を制したジャスティンパレス(牡5歳/栗東・杉山晴紀厩舎)。同じく昨年の皐月賞馬ソールオリエンス(牡4歳/美浦・手塚貴久厩舎)。そして、今春の大阪杯を勝ったベラジオオペラ(牡4歳/栗東・上村洋行厩舎)。GⅠホースの顔ぶれを見るだけで、気持ちはいやがうえにも盛り上がろうというものだ。
ただし、前記のGⅠウィナーのうち、今年GⅠで勝利を挙げたのはベラジオオペラだけで、他は昨年以前にタイトルを奪取したもの。各馬の能力の高さは認めつつも、この点は割り引いて考えるべきではないか。また、リバティアイランドが3月末のドバイ遠征(GⅠ、ドバイシーマクラシック3着)後に右前種子骨靭帯炎の発症が判明して休養に入り、リハビリを経ての復帰戦となることにも気を配っておきたい。
夏競馬の格言に「格より調子」という有名なフレーズがあるが、順調さを欠いたり、勝ち星から遠ざかっている「格」にまさる有力馬が多い今年の天皇賞(秋)にも、この警句が生きるのではないかと筆者は考えている。そうした状況も鑑みて、本稿で「主軸」として取り上げたいのは、今年に入って急激な成長を見せているレーベンスティール(牡4歳/美浦・田中博康厩舎)だ。
出世が遅れた昨春はクラシック戦線には乗れなかった本馬だが、7月のラジオNIKKEI賞(GⅢ、福島・芝1800m)で3着に入ると、9月のセントライト記念(GⅡ、中山・芝2200m)ではソールオリエンスに1馬身3/4差を付けて圧勝。しかし、レース後の疲労を考慮して菊花賞(GⅠ)への出走は回避。12月の香港ヴァーズ(G1、シャティン・芝2400m)を8着で終えて、2023年は幕を下ろした。 今年の初戦となった5月の新潟大賞典(GⅢ、新潟・芝2000m)は直線で伸びを欠いて11着に大敗したが、ここでひと叩きされて一変。続くエプソムカップ(GⅢ、東京・芝1800m)では直線7番手から最速の上がり(33秒7)を繰り出し、2着に2馬身差を付けて快勝。夏の休養を経て臨んだオールカマー(GⅡ、中山・芝2200m)でも道中は先団の4番手を進み、鋭い末脚で逃げ馬を差し切って優勝。重賞を連勝して、3歳秋にセントライト記念を制したポテンシャルの高さをあらためて示した。
田中博康調教師は共同会見で、「まだ弱い部分はあるが、少しずつだが体質も強くなってきた」とし、追い切りについては「今回は戦う相手も違い、同じ仕上げでは勝負にはならないので、そういった点を踏まえて調整しているし、馬もそれによく応えてくれている」と自信ものぞかせた。
また、今回で3連続騎乗となるクリストフ・ルメール騎手は「天皇賞(秋)はオールカマーとは全然違うレベルのレース。レーベンスティールはレベルアップしないといけない。今回はチャレンジャーというポジションで、ドウデュースとリバティアイランドにチャレンジしたい。レースがとても楽しみ。レーベンスティールのコンディションはすごくいいので頑張れると思う」と、期待する気持ちを隠さない。
GⅡまでしか勝利経験のない馬が、GⅠレースのなかでも最高峰に位置づけられる天皇賞を勝てるなどと軽々には言えない。しかしそれでも、流れに左右されない先行力と、終いの切れ味を併せ持つ本馬の能力はここでも見劣らないもの。大切に使われたうえで、ようやく本格化したレーベンスティールならば、居並ぶGⅠホースに交じっても好勝負は可能と見て「主軸」に推す。
相手となるのは当然、前記のGⅠウィナー6頭となるが、なかでも人気の面も考慮して強調したいのは、3歳の夏を越してから充実著しいベラジオオペラ。そして、好調教を連発して皐月賞制覇時の迫力を取り戻しつつあると思われるソールオリエンスの2頭だ。逆に、故障休養明けとなるリバティアイランドはやや評価を下げたい。
さらに、穴候補として挙げておきたいのは堀宣行厩舎の2頭、タスティエーラとダノンベルーガ。特にクリスチャン・デムーロ騎手を鞍上に迎えて、詰めの甘さに泣いてきたダノンベルーガがどのようなケミストリーを見せるかに注目したい。
取材・文●三好達彦
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